著者
福田 健二 朽名 夏麿 寺田 徹 マンスーニャ モハマド レザ ウディン モハマド ニザム 神保 克明 渋谷 園実 藤枝 樹里 山本 博一 横張 真
出版者
森林立地学会
雑誌
森林立地 (ISSN:03888673)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.83-98, 2013-12-25 (Released:2017-04-03)
被引用文献数
2

千葉県柏市の都市近郊林において,福島第一原子力発電所の事故による放射性セシウム汚染の実態を調べた。2011年8月〜12月の地上1 mの空間線量率は0.3〜0.4 μSv/h程度であった。2011年秋〜2012年秋に採集された植物体の放射性セシウム濃度は, 2011年受けた枝や常緑樹の旧葉では1.2〜8.8 kBq/kg,事故時に展葉していなかった常緑広葉樹の当年葉や落葉広葉樹の葉では0〜2.8 kBq/kgであった。2011年夏〜秋に採集された地表徘徊性甲虫ではほとんどが5 kBq/kg以下であったが,キノコでは高い値のものが多く,最大61 kBq/kgを示した。2012年春に伐採された間伐木の放射性セシウム濃度は,ヒノキでは外樹皮,次いで旧葉で高く,落葉樹では外樹皮で最も高かった。いずれも辺材,心材へのセシウムの浸透がみられた。これらは,里山活動における薪や堆肥の利用に支障をきたす汚染レベルであった。大青田の樹木地上部への放射性セシウム沈着量の推定値は,ヒノキの枝葉への大量の沈着を反映して,ヒノキ・イヌシデ林の地上部で5.7 kBq/m^2と,コナラ・クヌギ林の地上部の3.7 kBq/m^2の約1.5倍であった。コナラ・クヌギ林の地下部5 cmまでの沈着量合計は85 kBq/m^2であり,地上部と地下部を合わせた林分全体の放射性セシウム沈着量は約90 kBq/m^2と見積もられた。2013年1月のコナラ林の土壌では,放射性セシウムはリター層よりもA層に多く分布しており,落葉の除去による除染効果はほとんど期待できないと考えられた。