著者
野田 誠 鈴木 文男 藤波 竜也 山本 康人 吉川 俊治 田代 宏徳 薄井 宙男 市川 健一郎 瀬崎 和典 磯部 光章
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.40, no.Supplement4, pp.12-19, 2008-11-30 (Released:2013-05-24)
参考文献数
8

三尖弁輪自由壁のatrio-fascicular型Mahaim(M)線維は,左脚ブロック型wide QRS頻拍の原因となりうるが,発生学的には“遺残副房室結節”がその本体と考えられる.M線維伝導を,房室結節・His束伝導(A-H-V伝導)のごとくA-M-V伝導として考えた場合,M伝導ブロックはAM blockとMV blockに分類しうる.持続性MV blockのためにMahaim頻拍の出現を認めないと推察された“innocent bystander Mahaim”の1例を報告する.【症例】68歳,女性.電気生理検査よりslow-fast型AVNRTが診断された.いかなる電気刺激にても心室早期興奮波形は出現しなかったが,三尖弁輪においた20極カテーテルよりM電位と推察されるスパイク電位を記録しえた.AM伝導は減衰伝導を示し,ATPによりAM blockが誘発された(房室結節類似組織の診断).心房期外刺激法において,AH blockが出現しH波・V波がともに消失したがAM伝導は保たれ,MV blockが明らかとなった.検査中,左脚ブロック型QRS波形が全く出現しないことより持続性のMV blockと考えられた.【結語】電気生理学的・発生学的観点より『MVblockを合併するMahaim線維(遺残副房室結節)』が考えられた.持続性MV blockのためにMahaim型QRS波形・Mahaim頻拍が出現しないものと推察された.