著者
田村 美恵子 野田 誠 村上 輔 渡部 真吾 大山 明子 山本 康人 田代 宏徳 薄井 宙男 市川 健一郎 恵木 康壮 針谷 明房 高澤 賢次 磯部 光章
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.5-10, 2012 (Released:2015-06-18)
参考文献数
6
被引用文献数
1

症例は47歳,男性.生来健康で,胸痛などの自覚症状はない.意識障害にて当院救急外来を受診したところ,心電図上完全房室ブロックによる最大10秒までの心停止を繰り返した.徐脈による症状と推定し,緊急入院のうえ経静脈ペーシングを行い,待機的に電気生理学的検査ならびにペースメーカー植込み術を施行した.冠動脈に異常はなく,左室収縮機能も正常であった.His束心電図ではHVブロックを認めたが,逆行性房室伝導はみられなかった.洞結節回復時間を確認するため洞調律より20bpm速い頻度(110bpm)で刺激を加えたところ,刺激直後から1:1の関係を保って持続的に心房刺激が心室を捕捉する所見がみられた.刺激停止後に再びHVブロックによる房室伝導障害が顕在化した.本現象は器質的心疾患の指摘されない健常心筋に生じた徐脈依存性ブロックと考えられ,その機序に第4相ブロックの関与が示唆された.
著者
山本 哲也 長谷川 香子 小野田 誠 田中 啓一
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.136, no.6, pp.905-911, 2016 (Released:2016-06-01)
参考文献数
13
被引用文献数
1 7

Iguratimod (IGU), a disease-modifying antirheumatic drug launched in September 2012, has been reported to carry a risk of severe hemorrhages through a suspected interaction with warfarin (WF) in the all-case surveillance and early postmarketing-phase vigilance. To elucidate possible mechanisms of adverse interaction between IGU and WF, we analyzed the effects of IGU on the pharmacodynamics and pharmacokinetics of WF in rats. IGU was orally administered to male Wistar rats once daily for 5 d at 10 or 30 mg/kg in combination with WF at an oral dose of 0.25 mg/kg. Coadministration of IGU 30 mg/kg enhanced the anticoagulant activity of WF; prolonged blood coagulation time (prothrombin time and activated partial thromboplastin time) and decreased levels of vitamin K (VK)-dependent blood coagulation factors (II, VII, IX, and X) were observed. On the other hand, the pharmacokinetic parameters of WF including maximum plasma concentration (Cmax) and area under the plasma concentration-time curve from 0 to 24 h (AUC0-24 h) were not affected by the combination with IGU. IGU alone did not change blood coagulation time at doses up to 100 mg/kg, while VK-dependent blood coagulation factors decreased slightly at 30 and 100 mg/kg. These results suggest that the pharmacodynamic effect of IGU on VK-dependent blood coagulation factors is involved in the mechanism of drug-drug interaction of IGU with WF.
著者
中川 貴史 中村 健太郎 笠岡 祐二 村田 将光 西村 健二 瀬崎 和典 野田 誠 鈴木 文男
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.43, no.SUPPL.3, pp.S3_28-S3_33, 2011 (Released:2012-12-05)
参考文献数
4

持続する上室性頻拍においてP波とQRS波の出現タイミングは一定であり, 通常その関係が変化することはない. 頻拍中, 陰性P波の出現時相が, さまざまに変化したため, P波がQRS波に重なり, QRS波高が減少した房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT)の稀な1例を経験したので報告する.症例は71歳, 女性. 月に1~2回の頻拍発作を認め入院. 心臓電気生理学的検査よりAVNRTと診断された. 入院前に記録された頻拍時の心電図では, 頻拍周期540~440ms, QRS波の直後に深い陰性P波を認めた. 頻拍周期の短縮に伴い逆行性P波は早い時相に移動し, QRS波形を変形させた. 軽度の前方移動ではS波を, より高度の前方移動ではQ波を, 中等度の前方移動ではS波とQ波を同時に形成し, QRS波形をさまざまに変形させた. QRS波高も同時に減少したが(陥没現象), 陰性P波の“重なり”効果によると推察された.
著者
野田 誠 鈴木 文男 藤波 竜也 山本 康人 吉川 俊治 田代 宏徳 薄井 宙男 市川 健一郎 瀬崎 和典 磯部 光章
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.40, no.Supplement4, pp.12-19, 2008-11-30 (Released:2013-05-24)
参考文献数
8

三尖弁輪自由壁のatrio-fascicular型Mahaim(M)線維は,左脚ブロック型wide QRS頻拍の原因となりうるが,発生学的には“遺残副房室結節”がその本体と考えられる.M線維伝導を,房室結節・His束伝導(A-H-V伝導)のごとくA-M-V伝導として考えた場合,M伝導ブロックはAM blockとMV blockに分類しうる.持続性MV blockのためにMahaim頻拍の出現を認めないと推察された“innocent bystander Mahaim”の1例を報告する.【症例】68歳,女性.電気生理検査よりslow-fast型AVNRTが診断された.いかなる電気刺激にても心室早期興奮波形は出現しなかったが,三尖弁輪においた20極カテーテルよりM電位と推察されるスパイク電位を記録しえた.AM伝導は減衰伝導を示し,ATPによりAM blockが誘発された(房室結節類似組織の診断).心房期外刺激法において,AH blockが出現しH波・V波がともに消失したがAM伝導は保たれ,MV blockが明らかとなった.検査中,左脚ブロック型QRS波形が全く出現しないことより持続性のMV blockと考えられた.【結語】電気生理学的・発生学的観点より『MVblockを合併するMahaim線維(遺残副房室結節)』が考えられた.持続性MV blockのためにMahaim型QRS波形・Mahaim頻拍が出現しないものと推察された.
著者
中村 健太郎 中川 貴史 笠岡 祐二 村田 将光 西村 健二 瀬崎 和典 野田 誠 速水 紀幸 村川 裕二 鈴木 文男
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.44, no.SUPPL.3, pp.S3_117-S3_122, 2012 (Released:2013-09-25)
参考文献数
9

われわれは,冠静脈洞(CS)pacingによる反時計回転(ccw)型心房粗動(AFL)の誘発時に,右房峡部領域において一方向性伝導ブロックの出現がみられることを報告してきた.他方,頻度の稀なclockwise(cw)型AFLの誘発機転は十分には検討されていない.今回cw-AFLが誘発された症例においてその誘発様式を検討した.症例:心房粗細動を有する80歳,男性.CS近位部~三尖弁輪周囲に20極電極カテーテル(先端A1,極間5mm)を留置し,低位外側右房(A19-20電極)より頻回pacingを行って峡部の伝導様式を検討した.周期250msにおけるpacingの際,pacing部位近接部を起源とする反復性心房興奮(RAR1+RAR2+RAR3波)が誘発された.3発のRAR波はおのおのCS開口部領域にて分裂電位を形成し,Wenckebach型伝導遅延を示しながら峡部をccw方向に伝導した.3発目のRAR3波の伝導の際,CS開口部領域における伝導遅延が十分となり,cw方向に反転するmicro-reentry性 echo-wave が同領域に出現した(U-turn現象).出現したecho-waveは,そのままcw方向に三尖弁輪周囲を旋回し,cw-AFLへと移行した.
著者
尾上 剛士 薄井 宙男 八幡 真弓 吉江 祐 山本 康人 市川 健一郎 野田 誠 斉藤 壽一 磯部 光章
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.95, no.12, pp.2547-2549, 2006-12-10 (Released:2009-03-27)
参考文献数
2
被引用文献数
1

症例は42歳, 女性. 進行する浮腫, 全身倦怠感にて来院. 心エコー上右心負荷所見が強く当初原発性肺高血圧症を疑った. 入院後急性増悪しショック, 急性腎不全となったが右心カテーテル所見より脚気心が疑われビタミンB1投与により速やかに循環動態が改善した. 健康に関心が強く健康食品を中心とした食生活を送っていた事がビタミンB1欠乏の原因と考えられ, 偏った健康知識が致命的となりかねなかった教訓深い症例と考えられた.
著者
羽田野 袈裟義 荒尾 慎司 野田 誠
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.22-00318, 2023 (Released:2023-06-20)
参考文献数
21

底流と越流が複合したゲートは底流方式と越流方式の利点を保ちながらそれぞれの方式が有する欠点を回避できる可能性があり,流域治水の面から期待される.しかしながらその定量的な評価を目指した研究の成果で設計に耐える十分なものはないようである.本研究では,現実で重要と考えられる流れの組合せとして底流(自由流出・潜り流出)と完全越流が複合したチェックゲートをすぎる流れについて,基礎的実験により水深と流量の間の関係を検討すると共に,底流と越流の流量を既往の研究成果を利用して個別に評価しその合計の流量を見積もることを試みた.得られた合計流量の計算値と実験値との比較から,流量の計算値は一定の水理条件の範囲内で実験結果と良好に一致することが示された.
著者
江木 伸子 廣瀬 理恵子 平尾 和子 野田 誠司 齋尾 恭子
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
pp.NSKKK-D-22-00088, (Released:2023-06-05)

大豆分離タンパク質 (SPI)の部分的酵素加水分解が乳化安定性に影響することは既に報告されている.著者らは市販の部分的加水分解された大豆タンパク質素材を用いて,乳化安定性の高いエマルションの調製について報告した.本報の目的は,数種の熱帯果実の果汁をSPIに直接反応させることにより,SPIから保形性および安定性の高いエマルションを調製することである.その結果,パイナップル,キウイ,イチジク,メロン,パパイア(未熟)の果汁をSPIと反応させることにより,擬塑性流動を示し,保形性のある安定なエマルションを,パパイン酵素と同様に調製できることを明らかにした.本研究の範囲において,果実の種類,産地,熟度,果汁とSPIの反応条件により,エマルションの外観,SDS–PAGEによるタンパク質分解物のパターン,流動曲線による物性等が変化した.電気泳動パターンでは11Sの酸性サブユニットの消失とエマルションの安定性との関係が示唆された.
著者
阿保 勝之 秋山 諭 原田 和弘 中地 良樹 林 浩志 村田 憲一 和西 昭仁 石川 陽子 益井 敏光 西川 智 山田 京平 野田 誠 徳光 俊二
出版者
日本海洋学会 沿岸海洋研究会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.101-111, 2018 (Released:2020-02-12)
参考文献数
27
被引用文献数
4

1972~2013年の約40年間にわたる浅海定線調査データをもとに,瀬戸内海における栄養塩濃度などの水質や海洋環境の長期変化傾向を明らかにした.水温は温暖化の影響で上昇しており,特に秋季の上昇率が高かった.透明度は,大阪湾を除く瀬戸内海では1990年代以降,大阪湾では2000年以降に上昇した.瀬戸内海の栄養塩濃度は減少傾向であった.DIN濃度は,大阪湾を除く瀬戸内海では1970年代に急激に低下した後,2000年代以降に再び低下が見られた.大阪湾では,1970年代の低下は見られなかったが,1990年以降に大幅な低下が見られた.DIP 濃度は,1970年代に高かったが1980年頃に低下し,大阪湾を除く瀬戸内海ではその後は横ばい,大阪湾の表層ではその後も低下を続けた.栄養塩濃度の低下については,陸域負荷削減が大きく影響しているが,底泥や外海からの供給量低下や近年の全天日射量の増加も栄養塩濃度の低下に影響を及ぼしていると考えられた.
著者
羽田野 袈裟義 荒尾 慎司 野田 誠
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.22-00285, 2023 (Released:2023-03-20)
参考文献数
21

従来のゲートの水理検討は流量評価を第一とし,ゲート操作のための直接情報を与える研究は殆ど皆無である.本研究は,ゲート操作ではゲート開度の陽形式表現が最も重要な情報と考え,スルースゲートからの自由流出と潜り流出の両方について,水理学の基礎式に基づき,所定の流量とゲート上(下)流の水深に応じてゲート開度を決定する方法を提案している.自由流出について,運動量の定理に基づきゲート上流水深と所望の単位幅流量(限界水深)に見合うゲート開度を求める式を導いた.潜り流出については,Henryの取扱い方法から出発し,ゲート上・下流水深と所望の単位幅流量に見合うゲート開度を求める4次方程式を導いた.得られたゲート開度の計算結果は広範囲の室内実験の結果を良好に再現した.
著者
尾上 剛士 薄井 宙男 八幡 真弓 吉江 祐 山本 康人 市川 健一郎 野田 誠 斉藤 壽一 磯部 光章
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.95, no.12, pp.2547-2549, 2006-12-10
被引用文献数
1

症例は42歳, 女性. 進行する浮腫, 全身倦怠感にて来院. 心エコー上右心負荷所見が強く当初原発性肺高血圧症を疑った. 入院後急性増悪しショック, 急性腎不全となったが右心カテーテル所見より脚気心が疑われビタミンB1投与により速やかに循環動態が改善した. 健康に関心が強く健康食品を中心とした食生活を送っていた事がビタミンB1欠乏の原因と考えられ, 偏った健康知識が致命的となりかねなかった教訓深い症例と考えられた.
著者
野田 誠司
出版者
東京都立食品技術センター
雑誌
東京都立食品技術センタ-研究報告 (ISSN:09197214)
巻号頁・発行日
no.15, pp.7-10, 2006-03

マグロすり身を50℃、60分間加熱、85℃、20分間加熱または2段加熱(50℃、60分間加熱後、85℃、20分間加熱)して作製した3種類の加熱ゲルについて、保水性、色調及び食味の比較検討を行った。(1)2段加熱ゲルは、通常の85℃、20分間加熱ゲルと比較して、0-100秒付近までの圧搾初期における圧出水分量は少なく、保水性が高かった。(2)加熱条件による色調の差異はほとんど認められなかった。(3)食味検査では、2段加熱したゲルの方が85℃、20分間加熱したゲルと比較して弾力性に優れ、水っぽさやパサパサ感も少なく、総合的に評価が高かった。以上より、マグロすり身においては、2段加熱法によって品質の高いかまぼこを製造できることが保水性、色調及び食味検査から判断しても示唆された。