著者
楠 幹生 鐘江 保忠 藤田 究 井口 里香 北濱 郁雄 村口 浩 佐野 有季子 藤村 敬子 香西 俊哉
出版者
樹木医学会
雑誌
樹木医学研究 (ISSN:13440268)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.8-12, 2017-01-31 (Released:2018-01-31)
参考文献数
10

2016年に香川県高松市の盆栽産地において,Coleosporium phellodendriによるクロマツ葉さび病およびCronartium orientaleによるこぶ病の盆栽での発病リスクについて調査を行った.その結果,葉さび病については中間宿主となるキハダが輸出用盆栽園地の300m以内に存在しなかったため,本病害の盆栽での発生の可能性は極めて低いと考えられた.また,こぶ病については,輸出用盆栽園地の300m以内に中間宿主が存在した.しかし,樹齢約100年のクロマツにもこぶ症状が見られなかったことから,少なくとも100年間はこぶ病が発生していないか,あるいは発病していたとしても適切な管理により園地から完全に排除されていたと考えられる.この調査結果と両病原菌の生活環,盆栽の栽培管理方法,病害虫防除および気象条件を総合的に考えると,今後も両病害が発生する可能性は極めて低いと考察した.クロマツ盆栽については,欧州は葉さび病菌およびこぶ病菌について侵入を警戒しているが,すでに輸出されているゴヨウマツ盆栽と同様の検疫措置を実施することにより,欧州諸国への侵入リスクは極めて低いものと判断する.