- 著者
-
竹下 浩
藤田 紀勝
- 出版者
- 一般社団法人 日本教育心理学会
- 雑誌
- 教育心理学研究 (ISSN:00215015)
- 巻号頁・発行日
- vol.67, no.4, pp.265-277, 2019-12-30 (Released:2020-01-24)
- 参考文献数
- 26
- 被引用文献数
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近年の精神障害者の就労ニーズ急増に伴い,就労移行支援員の養成が課題となっている。しかし,医療・福祉の支援から職場での支援への「橋渡し期」特有の利用者に必要な就労スキルや,それらのスキル習得を支援する介入方略については未解明である。そこで本研究は,就労移行支援事業所の支援員(n=18)から得られたデータを質的に分析することで,利用者が就労スキルを習得していくプロセスと,支援員がそれを支援するプロセスとを統合的に明らかにする。分析の結果,55概念,4コアカテゴリー(「作業ギャップ発見→やり方を教える」「対人ギャップ発見→他者分析→付き添いながら経験させる」「認知ギャップ発見→自己分析→受けつつの技掛け」「自立発見→他者との連携」),19カテゴリー,2サブカテゴリーが生成された。「就労移行支援員による利用者のスキル発達支援過程」は,「就労スキルの熟練者が,就労に必要なスキルを順番に訓練していく」という上から下への一方向的な支援ではなく,「支援員と利用者が相互作用を続ける結果,利用者は就労スキル,支援員は支援スキルが発達していく」という互恵・循環的なプロセスを示していた。利用者の異なるスキル発達のためには,異なる支援方略が必要である。支援員の心理的要因が支援スキル発達に影響している。