著者
藤田 邦子 石川 裕治 中谷 基 熊倉 勇美
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.14-20, 1993-01-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
16
被引用文献数
1

失語症患者のジェスチャー表出能力の客観的な評価の試みとして, 表出されたジェスチャーを「構成要素」という考え方を用いて新たに分類し, 「構成要素の数」とその「内容の正確さ」という両側面から評価, 分析した.その結果, (1) 失語群は健常者群に比べ, 構成要素総数の有意な低下がみられた. (2) 失語症が重篤になるに従って, 構成要素総数も少なく, 絵カードに描かれているとおりの形態を2次元的に描くのみで動作を示さないことが多かった.これらは失語症のタイプとは関係なく観察された. (3) 質的分析の結果, 重度失語症例では描いた形態の大きさや正確さが不適切であり, さらにファンクションの数, 質ともに低く, 伝達性の低いことが確認された. (4) 非流暢性タイプの失語症者はジェスチャー伝達に停滞を示すことが多かった.以上の所見に若干の考察を加えた.