著者
熊倉 勇美
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.15-20, 2012-03-31 (Released:2013-04-02)
参考文献数
7

脳血管障害などに起因する摂食・嚥下障害の患者は, (1) 低栄養・脱水, (2) 誤嚥性肺炎, (3) 窒息など, によって生命を脅かされる。また, 止むを得ず経管栄養などを選択すると, 口から食べる楽しみが奪われ, (4) QOL が低下する。言語聴覚士 (ST) は, 摂食・嚥下機能の回復, QOL の向上などに関わるリハビリテーションチームの一員であるが, 最近では高次脳機能と「食べること・飲み込むこと」に関連した問題にも取り組んでいる。中でも高齢者や認知症患者, さらに高次脳機能障害患者の食の問題 (ペーシング障害や拒食などからもたらされる栄養失調, 誤嚥性肺炎など) がトピックスとして取り上げられている。本稿では, 高次脳機能障害の中から半側空間無視の 2 症例を挙げ, 治療経過を紹介した。最後に, ST の立場から高次脳機能障害と摂食・嚥下障害に関して, 今後の展望と, 取り組むべき課題について論じた。
著者
藤田 邦子 石川 裕治 中谷 基 熊倉 勇美
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.14-20, 1993-01-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
16
被引用文献数
1

失語症患者のジェスチャー表出能力の客観的な評価の試みとして, 表出されたジェスチャーを「構成要素」という考え方を用いて新たに分類し, 「構成要素の数」とその「内容の正確さ」という両側面から評価, 分析した.その結果, (1) 失語群は健常者群に比べ, 構成要素総数の有意な低下がみられた. (2) 失語症が重篤になるに従って, 構成要素総数も少なく, 絵カードに描かれているとおりの形態を2次元的に描くのみで動作を示さないことが多かった.これらは失語症のタイプとは関係なく観察された. (3) 質的分析の結果, 重度失語症例では描いた形態の大きさや正確さが不適切であり, さらにファンクションの数, 質ともに低く, 伝達性の低いことが確認された. (4) 非流暢性タイプの失語症者はジェスチャー伝達に停滞を示すことが多かった.以上の所見に若干の考察を加えた.
著者
熊倉 勇美
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.224-235, 1985
被引用文献数
16 12

舌癌術後の60症例に対し, 聴覚印象による明瞭度の評価ならびに修復後の舌の量とその可動性の直接的観察をおこない, 舌切除後の構音機能に関して以下のような結論を得た.<BR>(1) 舌の切除範囲が広くかつ大きくなるほど, 舌のボリュームは小さくなり, その可動性もまた制限され明瞭度は低下する. (2) いわゆる舌半側切除よりもさらに広範囲な切除になると, PM-MC flapによる再建の方が非再建例に比べて明瞭度は良好である. (3) 一般に術後に一度低下した明瞭度は6ヵ月までに回復し, その後はPlateauとなる.またPM-MC flapによる再建の場合には, 一度改善した明瞭度が, 再び舌容量の減少につれて低下する場合がある. (4) 構音障害の特徴に関しては舌尖や舌背後部による閉鎖が得られず, 構音様式では閉鎖音が摩擦音・破擦音に, 構音点では歯茎音や軟口蓋音が両唇音・声門音などに聞き取られる傾向を示す.その他, 咬合異常, 顔面神経の下顎枝のマヒ, 唾液の貯溜なども明瞭度を低下させる条件となる. (5) 明瞭度が70%以上では社会復帰が可能であるが, それ以下になると実用性は低くなる.
著者
熊倉勇美
雑誌
音声言語医学
巻号頁・発行日
vol.26, pp.224-235, 1985
被引用文献数
2