著者
廣瀬 敬 藤野 清志
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、マントル最下部に相当する超高圧実験を行うことにより、ペロフスカイト/ポストペロフスカイト相の安定領域、熱弾性的性質、元素分配などを明らかにすることを目的としている。今年度はより高い温度を発生することを目的とした技術開発を精力的に行い、150万気圧において4500ケルビンに至る高温の発生に成功した。これまでメガバール領域(100万気圧以上)で4000ケルビン以上の実験結果が報告されたことはなく、135万気圧3000-4000ケルビンにあるとされるコア・マントル境界域の超高圧高温の発生に世界ではじめて成功したことになる。このような世界をリードする実験技術により、今年度は放射光施設スプリングエイトにおいてX線を用いたMgSiO3組成におけるペロフスカイトとポストペロフスカイトの相転移境界を4500ケルビンまでの超高温下で決定することを試みた。その予察的な結果は、マントルの底における相転移温度は3400ケルビンと、従来の推定よりもはるかに温度が低いことを示している。マントル最下部における地震波の二重不連続面の存在により、マントルの底はペロフスカイト相が主要鉱物であると考えられる。すなわちその温度はポストペロフスカイトからペロフスカイトへの相転移温度よりも高いことが示唆されており、今回の結果はコア・マントル境界の温度を制約する重要なデータになりうる。今後、より詳細な検討が期待される。