著者
藤金 倫徳
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.13-21, 1992
被引用文献数
7

自発的に使用できる要求言語を形成しようとする試みの一つに、数種類の要求対象物が子どもに見え、しかもそれを自己充足することが困難な設定のもとで訓練を行うものがある。しかしその結果、要求対象物が用意されていなければことばが生起しないことが明らかになった。本研究では、このようなことばを強化随伴性から「選択要求言語」だと考え、その自発的使用を促進することを試みた。具体的には、まず選択要求言語を形成し、その選択要求言語を統制している要求対象物の機能を要求充足者に転移させるステップで訓練を行った。このような刺激統制の転移を図るために、要求対象物を遅延提示するとともに、その提示時間のフェイドアウトを試みた。その結果、要求対象物の提示時間のフェイドアウトに伴って、要求対象物を提示しなくても、ことばが生起するようになった。さらに、強化子を正確に指定するように、ことばのトポグラフィーも自然に変化した。
著者
藤金 倫徳
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.3-12, 2002
被引用文献数
1 2

音声による要求言語の獲得は、発達障害児の重要な指導課題のひとつである。本研究では、他者の音声モデルを模倣できない子どもに、いかにして音声による要求言語を形成するかという点を検討した。実験1では、子どもを遊ばせた設定で、子ども自身の音声をプレイバックした結果、プレイバックした音声の生起確率が高まり、子ども自身の音声を利用する方法の適用可能性が示唆された。このことに基づいて、実験2では、子どもの音声を利用した要求言語形成について検討した。具体的には、対象児から採取した単音の音声をつなぎ合わせることで人工的に言語音を作成して、さらにそれを子ども自身が非言語的に要求している場面のビデオに録音したものを観察させる方法(人工セルフモデリング)である。その結果、子どもは、音声による要求言語が獲得できた。さらにこの方法は、獲得したことばの般化促進の技法としても利用できることが示された。