- 著者
-
藪 友良
- 出版者
- 慶應義塾大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2008
本研究では、マルコフ連鎖・モンテカルロ法(MCMC)を用いることで、高頻度の介入額を推計した上で、介入の為替レートへの効果をHourlyデータを用いて推定する(詳しくは、時間当たり介入額をauxiliary variableとして扱い、MCMC によって未知パラメータと時間当たり介入額の同時分布を求める)。この新アプローチを使って、1991/4/1~2002/12/31における日本の介入効果を推定したところ、1兆円の為替介入は、円ドルレートを1.7%変化させることがわかった。これは、1ドル=100円のとき、1兆円の介入により為替レートを1.7円動かすことを意味する。介入効果は、先行研究に比べて、その効果が倍以上となっていた。日本の通貨当局は2003年初から2004年春にかけて大量の円売りドル買い介入を行った。この時期の介入はJohn TaylorによってGreat interventionと命名されている。本稿では,このGreat interventionが,当時,日本銀行によって実施されていた量的緩和政策とどのように関係していたかを検討した。第1に,円売り介入により市場に供給された円資金のうち60%は日本銀行の金融調節によって直ちにオフセットされたものの残りの40%はオフセットされず,しばらくの間,市場に滞留した。この結果は,それ以前の時期にほぼ100%オフセットされていたという事実と対照的である。第2に,介入と介入以外の財政の支払いを比較すると,介入によって供給された円資金が日銀のオペによってオフセットされる度合いは低かった。この結果は日本銀行が介入とそれ以外の財政の支払いを区別して金融調節を行っていたことを示唆している。