- 著者
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藪内 聡子
- 出版者
- Japanese Association of Indian and Buddhist Studies
- 雑誌
- 印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
- 巻号頁・発行日
- vol.55, no.3, pp.1136-1139, 2007-03-25 (Released:2010-03-09)
- 参考文献数
- 4
ポロンナルワ時代, スリランカ史上最大の英雄と称される Parakkamabahu I 世 (1153-1186 A. D.) は, それまで Mahavihara, Abhayagiri, Jetavana の三派に分かれていたスリランカのサンガに対して, Mahavihara 派の受戒のみを承認してサンガの統一を断行したが, それが可能であったのは, アヌラーダプラ時代に遡り, 政治的概念として菩薩王思想が受容されて浸透したからであることが, 史書や碑文資料により認められる.菩薩王思想は, アヌラーダプラ時代初期については Abhayagiri 派と関連して発展したが, アヌラーダプラ時代中期以降は派とは関係なく独自に進展を遂げ, 政治的イデオロギーとして, 王の存在を限りなく仏陀に近い存在にし, 王権の正当性を強化して, サンガに対する行使力増大に寄与した. ポロンナルワ時代には, 南インドからの侵略のために, ことに王は軍事的頂点の存在として英雄性が重視されるが, 菩薩王思想は英雄性と混在し, サンガ統一により Mahavihara 派のみが存在するようになった後も, イデオロギー化して Mahavihara 派と同化して存続することになる.