著者
蛭川 幸史 岩田 亮 黒澤 昌弘 近藤 高正 後藤 滋巳
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
Orthodontic waves : journal of the Japanese Orthodontic Society : 日本矯正歯科学会雑誌 (ISSN:13440241)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.49-56, 1999-02-25
参考文献数
30
被引用文献数
18

歯の先天性欠如(以下, 先欠と記す)は, 隣在歯の傾斜, 対合歯の挺出, 上下歯列の正中線の偏位など不正咬合の原因となることがある.また, 先欠を有する患者に対して矯正治療を行う場合は, 上下顎の位置関係や, 顎の成長発育, discrepancy, 審美的問題などにこれが加わり, 治療方針や治療方法の決定が難しくなることが多い.そこで, 先欠の存在と不正咬合との関連を調べるため, 本学矯正歯科に来院した患者の先欠を統計的に調査した.愛知学院大学附属病院矯正歯科に来院し, 資料採得を行った不正咬合患者のうち, 唇顎口蓋裂などの先天異常, 歯数に異常を引き起こす可能性のある全身疾患の疑いのあるもの, 矯正治療の経験のあるものなどを除いた3343人を調査対象とした.第三大臼歯を除く永久歯の先欠は, 9.42%に認められた.欠如歯数は, 2歯までのもので全体の75%以上を占めていた.先欠の多い歯種は, 下顎第二小臼歯, 上顎第二小臼歯, 上顎側切歯, 下顎側切歯, 下顎中切歯であった.先欠の存在と不正咬合との関連では, 先欠を有する人は先欠の無い人に比べ, 叢生の割合が低く, 上顎前突と下顎前突の割合が高かった.先欠部位が, 上顎のみの人は, 下顎前突の割合が高く, 下顎のみの人は, 上顎前突の割合が高かった.また, 先欠を有する人は, 先欠部位にかかわらず過蓋咬合の割合が高かった.