著者
名和 弘幸 山内 香代子 栁瀬 博 岡本 卓真 松野 智子 荒木 麻美 堀部 森崇 藤井 美樹 外山 敬久 藤原 琢也 後藤 滋巳 福田 理
出版者
一般社団法人 日本障害者歯科学会
雑誌
日本障害者歯科学会雑誌 (ISSN:09131663)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.426-431, 2016 (Released:2017-06-30)
参考文献数
14

上顎第二乳臼歯の晩期残存と上顎第二小臼歯の異所萌出,上顎前突を呈する11歳9カ月の自閉スペクトラム症男児の治療について報告する.患者の発達指数は,遠城寺式・乳幼児分析発達検査においてDQ:59で,歯科治療に対する協力性は比較的良好であった.患児は5歳11カ月から医療福祉センターの歯科にて,歯科治療への適応向上のために定期的な口腔衛生管理を受けていた.最初の治療計画として,口腔衛生管理のため上顎第二小臼歯を正しい位置へ移動することとした.初期治療が問題なく完了し,患者が矯正歯科治療を希望した場合,上顎前突の治療のために矯正歯科を紹介する予定とした.スプリントを作製し,患者が口腔内に装置を装着できるかどうか確認するため,自宅で装着するように指示した.3カ月後,スプリントの着用時間が長くなったので,固定式矯正装置を作製し口腔内に装着した.7カ月後,上顎第二小臼歯は歯列に移動して,口腔衛生管理が行いやすくなったので,装置を取り外した.咬合誘導は良好な結果であり,患者と両親は上顎前突の改善も希望したので,矯正歯科へ依頼をした.矯正歯科受診時の患者の暦年齢および精神年齢は13歳0カ月と7歳8カ月であった.この症例報告より歯科治療への適応向上ができた自閉スペクトラム症児は,矯正歯科治療を始められる可能性が示唆された.
著者
野田 佳江 中筋 幾子 清水 幹雄 栗田 賢一 宮澤 健 後藤 滋巳 泉 雅浩
出版者
一般社団法人 日本顎関節学会
雑誌
日本顎関節学会雑誌 (ISSN:09153004)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.1-4, 2009 (Released:2012-02-15)
参考文献数
6

両側の下顎頭吸収が起き,これに継発して前歯部が開咬を呈する症例に対し,Indirect Bonded Splint(IBS)を用いた顎間牽引を行い,良好な結果を得られた。 患者は42歳の女性で,1年前より右側顎関節部の軽度の疼痛と前歯部の開咬を自覚していた。開咬は除々に増悪し,来院時にはoverjet+1.0mm,overbite-3.5mmとなっていた。開口域は46mmであった。CTでは両側下顎頭の平坦化がみられ,左側下顎頭海綿骨の緻密化および関節結節部にはエロージョンを認めた。そこで,IBSを歯列に装着し,ゴムにて顎間牽引を行った。顎間牽引終了8か月後,前歯部開咬は改善し,CTでは左右下顎頭および左側関節結節の皮質骨の再生が確認できた。 IBSを用いた顎間牽引は開咬を伴う変形性顎関節症に対する保存的療法の有用な一手段である。
著者
戸苅 彰史 近藤 久貴 平居 貴生 兒玉 大介 新井 通次 後藤 滋巳
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.145, no.3, pp.140-145, 2015 (Released:2015-03-10)
参考文献数
45
被引用文献数
1 3

骨芽細胞および破骨細胞にアドレナリン受容体(AR)の発現が見出されて以来,骨代謝における交感神経系の生理的役割についての研究が著しく進展した.これら細胞へのARシグナルが神経由来であることも示されている.交感神経の骨代謝に及ぼす影響として,β2-ARによる骨吸収の促進および骨形成の抑制による骨量低下が認められている.一方,α1-ARによる骨形成の促進も見出されており,その促進機構を明らかにすると共に,骨芽細胞におけるβ2-ARとα1-ARシグナルの相互関連の解析が求められている.また,臨床的にβ-AR遮断薬が骨折リスクを低下させることが高血圧患者において認められているが,歯科矯正治療における歯の移動をβ-AR遮断薬およびβ-AR作動薬により調節できる可能性も動物実験で示されている.骨組織の局所におけるメカニカルストレスが交感神経活動を制御する機構を解析するため,交感神経と感覚神経との相互関連の解析も望まれる.
著者
蛭川 幸史 岩田 亮 黒澤 昌弘 近藤 高正 後藤 滋巳
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
Orthodontic waves : journal of the Japanese Orthodontic Society : 日本矯正歯科学会雑誌 (ISSN:13440241)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.49-56, 1999-02-25
参考文献数
30
被引用文献数
18

歯の先天性欠如(以下, 先欠と記す)は, 隣在歯の傾斜, 対合歯の挺出, 上下歯列の正中線の偏位など不正咬合の原因となることがある.また, 先欠を有する患者に対して矯正治療を行う場合は, 上下顎の位置関係や, 顎の成長発育, discrepancy, 審美的問題などにこれが加わり, 治療方針や治療方法の決定が難しくなることが多い.そこで, 先欠の存在と不正咬合との関連を調べるため, 本学矯正歯科に来院した患者の先欠を統計的に調査した.愛知学院大学附属病院矯正歯科に来院し, 資料採得を行った不正咬合患者のうち, 唇顎口蓋裂などの先天異常, 歯数に異常を引き起こす可能性のある全身疾患の疑いのあるもの, 矯正治療の経験のあるものなどを除いた3343人を調査対象とした.第三大臼歯を除く永久歯の先欠は, 9.42%に認められた.欠如歯数は, 2歯までのもので全体の75%以上を占めていた.先欠の多い歯種は, 下顎第二小臼歯, 上顎第二小臼歯, 上顎側切歯, 下顎側切歯, 下顎中切歯であった.先欠の存在と不正咬合との関連では, 先欠を有する人は先欠の無い人に比べ, 叢生の割合が低く, 上顎前突と下顎前突の割合が高かった.先欠部位が, 上顎のみの人は, 下顎前突の割合が高く, 下顎のみの人は, 上顎前突の割合が高かった.また, 先欠を有する人は, 先欠部位にかかわらず過蓋咬合の割合が高かった.