著者
衞藤 暢明 川嵜 弘詔
出版者
九州精神神経学会
雑誌
九州神経精神医学 (ISSN:00236144)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.75-82, 2017-08-15 (Released:2020-03-26)
参考文献数
22

統計上10歳代の自殺は,昭和30年以降減少している。また他の年代に比べて数が圧倒的に少なく,自殺率も非常に低い。しかし,各国の状況と比較すると,15歳以上で自殺の割合は多い。 思春期では自殺念慮は高い頻度で認めるが,自殺行動に至ることは少ない。自殺未遂後の既遂の割合は他の年代と同様に高い。そして自傷は将来の自殺に至る可能性を高める。メディアの影響で生じる群発自殺やインターネットに関連した思春期の自殺もある。 思春期では自殺自体が少ないため,自殺予防の方策を確立することは難しく,自殺既遂をアウトカムとした調査・研究もほとんどない。また,思春期では精神疾患の確定が困難であり,個人の心理的な成熟や社会の変化の影響を受けるために,治療はより複雑となる。しかし,思春期の自殺予防は社会的な要請であり,エビデンスを確立していく必要がある。