著者
永野 健太 飯田 仁志 大串 祐馬 鎗光 志保 武藤 由也 矢野 里佳 川嵜 弘詔
出版者
九州精神神経学会
雑誌
九州神経精神医学 (ISSN:00236144)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3_4, pp.112-117, 2018-12-15 (Released:2020-03-26)
参考文献数
15

日本では2018年度から性同一性障害に対する性別適合手術の保険適用が認められた。また,疾患名も性同一性障害から性別違和(DSM‐5),性別不合(ICD‐11)に改名された。世間ではLGBTという言葉が広まっており,学校や企業もセクシャルマイノリティへの対応を進めている。さらに2020年の東京オリンピックに向けて,セクシャルマイノリティへの理解は加速していると言えるだろう。しかし,我が国において,医療者の中で性同一性障害や性の多様性についての知識はそれほど広まってはいないのが現状である。日本には性別違和を治療する医療施設が少なく,現在も性別違和のある患者は遠方のジェンダークリニックを訪れている。本稿では現時点での最新の知識をまとめることによって,性同一性障害および性の多様性について基本的なレビューを行いたい。
著者
中西 翔一郎 光安 博志 川嵜 弘詔
出版者
一般社団法人 日本総合病院精神医学会
雑誌
総合病院精神医学 (ISSN:09155872)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.327-333, 2015-10-15 (Released:2018-11-01)
参考文献数
11

目的:九州大学病院コンサルテーション・リエゾン部門(以下CL部門)におけるステロイド誘発性精神障害(以下ステロイド精神障害)の発症率,副腎皮質ステロイド薬(以下ステロイド)の用量と精神障害発症頻度を調査する。方法:2008年4月〜2011年3月にCL部門に受診した1,106例の診療録を調査した。1)ステロイド精神障害が多かった5つの診療科(以下,5科)はCL未受診者も含めステロイドの投与方法と用量を解析した。2)5科のCL受診患者のステロイド精神障害発症と臨床的因子について多変量解析した。結果:CL部門受診患者のステロイド精神障害は2.3%だった。5科において注射剤投与の患者は有意にステロイド投与量が多く,ステロイド精神障害の有無で受診前1カ月のステロイドの1日最大量に有意差はなかった一方,ステロイド総投与量は有意に多かった。結論:1カ月のステロイド総投与量がステロイド精神障害の危険因子である可能性が示唆された。
著者
衞藤 暢明 川嵜 弘詔
出版者
九州精神神経学会
雑誌
九州神経精神医学 (ISSN:00236144)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.75-82, 2017-08-15 (Released:2020-03-26)
参考文献数
22

統計上10歳代の自殺は,昭和30年以降減少している。また他の年代に比べて数が圧倒的に少なく,自殺率も非常に低い。しかし,各国の状況と比較すると,15歳以上で自殺の割合は多い。 思春期では自殺念慮は高い頻度で認めるが,自殺行動に至ることは少ない。自殺未遂後の既遂の割合は他の年代と同様に高い。そして自傷は将来の自殺に至る可能性を高める。メディアの影響で生じる群発自殺やインターネットに関連した思春期の自殺もある。 思春期では自殺自体が少ないため,自殺予防の方策を確立することは難しく,自殺既遂をアウトカムとした調査・研究もほとんどない。また,思春期では精神疾患の確定が困難であり,個人の心理的な成熟や社会の変化の影響を受けるために,治療はより複雑となる。しかし,思春期の自殺予防は社会的な要請であり,エビデンスを確立していく必要がある。