著者
金 鉉哲 裵 智恵
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.173-186, 2020-10-31 (Released:2021-05-25)
参考文献数
36

現在,韓国の出生率は,世界で最も低い数値を記録している.韓国政府はさまざまな出産奨励政策を進めてきたが,韓国政府の努力が必ずしも有効であるとは言い難く,今後の展望も明るくはない.韓国における人口政策がその有効性を失ったのは,IMF経済危機の以後からである.韓国社会において少子化をもたらす最も大きな要因は経済的な問題である.特に過度な私教育費の問題は,夫婦の出産意欲を低下させ,出産忌避をもたらしていると指摘されている.過度な私教育費支出の背景には,加熱し続ける教育熱,高校の序列化など学歴競争を深化させる教育政策,そして労働市場における著しい賃金の格差など,複数の要因が関連している.現実を打開できる改善策を考えるのは容易ではないが,教育の側面から言うならば,とりあえず,学校の序列化に歯止めをかけることによって私教育費支出への負担を軽減する政策が必要であるだろう.