著者
金 鉉哲 裵 智恵
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.173-186, 2020-10-31 (Released:2021-05-25)
参考文献数
36

現在,韓国の出生率は,世界で最も低い数値を記録している.韓国政府はさまざまな出産奨励政策を進めてきたが,韓国政府の努力が必ずしも有効であるとは言い難く,今後の展望も明るくはない.韓国における人口政策がその有効性を失ったのは,IMF経済危機の以後からである.韓国社会において少子化をもたらす最も大きな要因は経済的な問題である.特に過度な私教育費の問題は,夫婦の出産意欲を低下させ,出産忌避をもたらしていると指摘されている.過度な私教育費支出の背景には,加熱し続ける教育熱,高校の序列化など学歴競争を深化させる教育政策,そして労働市場における著しい賃金の格差など,複数の要因が関連している.現実を打開できる改善策を考えるのは容易ではないが,教育の側面から言うならば,とりあえず,学校の序列化に歯止めをかけることによって私教育費支出への負担を軽減する政策が必要であるだろう.
著者
金 鉉哲
出版者
慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所
雑誌
メディア・コミュニケ-ション (ISSN:13441094)
巻号頁・発行日
no.53, pp.65-76, 2003-03

1 はじめに2 近代メディアと少女のイメージ3 「女子高生」のイメージマップ4 女子高生イメージのコントラスト5 おわりに
著者
金 鉉哲
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本年度の研究は韓国の近代劇の先駆者である洪海星と築地小劇場の影響関係を中心に行った。洪海星(1894-1957)は韓国最初の演出家であり、韓国近代演劇の先覚者として非常に重要な人物である。特に洪海星は1924年-1929年の間、直接築地小劇場の俳優としても活躍した。そのために洪海星の演劇理論と演出作品に築地小劇場の影響が非常に大きかった。本年度の研究では、洪海星が本格的に韓国近代劇運動を始めた1930年一1935年を中心に、築地小劇場との関係を三つのポイントに基づいて明らかにした。第一は「実際公演と築地小劇場の関係」である。洪海星は韓国の近代劇運動の基盤を築きあげるために築地小劇場の演目をそのまま継承して公演した。洪海星の演出は当時の演劇人たちから肯定的な評価を受けたが、築地小劇場の反復に過ぎないという否定的な評価も少なくなかった。殊に第一回築地小劇場の公演でも話題になった表現主義劇である『海戦』の演出は洪海星の演出方式に関する賛否両論の論争の争点になった。第二は「築地小劇場と洪海星の演出方式」である。洪海星が築地小劇場の演目の中で最も高い評価を得た作品は『検察官』である。しかし、当時の演劇評を詳しく調べれば高い評価の根拠には築地小劇場の方式をそのまま生かした演出方式があげられる。即ち、洪海星の演出方式はただ築地小劇場の演出方式を紹介する程度で満足していたことである。第三は「劇芸術研究会の評価」である。洪海星の演劇活動中にいまだに解けない謎は突然劇芸術研究会を離れて大衆劇の劇団として有名な東洋劇場へ移動したのである。今までは経済的な問題が一番重要な原因として提起されているが、経済的な問題一つだけでは説明されない部分が多い。しかし、洪海星が参加した近代劇運動団体である劇芸術研究会における彼の位置を考えたら非常に簡単に釈明される。劇芸術研究会で洪海星は独創的な演出力を持っている演出家という評価とは程遠かった。単に、築地小劇場の体験を韓国に紹介する役割に過ぎなかった。結局、自由な演劇運動ができない劇芸術研究会を離れて東洋劇場へ移ったのである。