著者
西 隆太朗
出版者
一般社団法人 日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.30-41, 2016 (Released:2016-10-24)
参考文献数
45
被引用文献数
2

省察は,津守眞の思想の中でも中心的な概念である。近年保育の質への注目が高まる中で,この概念への言及が増えているが,その多くは反省・記録・話し合いの外的・形式的側面を扱うものとなっている。これに対して本研究は,形式を超える内的過程を含む津守の思想を,その理論的側面のみならず実践思想としての側面から,彼の事例研究を含めて検討し,明らかにするものである。省察の内的過程を特徴づけるものとして,津守の論述と事例の検討により,(1) 行動を表現として見る,(2) コミットメント(保育者の主体的・全人的関与),(3) インキュベーション(孵化)の過程,(4) 子どもとの相互的関係が見出された。さらに省察における主観的解釈の問題について,子どもたちとの出会いに立ち返り,事例を読み解く方法論と実践知を培う必要性が示された。
著者
西 隆太朗
出版者
一般社団法人 日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.6-17, 2015-08-31 (Released:2017-08-04)
被引用文献数
3

倉橋惣三の保育者論については,主にその理論的・概念的な検討がなされてきたが,保育者の資質が単に機械論的に身につけられるものではなく,自己を通して実現されることからは,倉橋の思想も概念のみならず具体的な過程や体験を通して理解されるべきであろう。本研究では,倉橋が保育者のアイデンティティ探求の過程を描いた小説「夏子」をもとに,物語から彼の保育者論を具体的に検討する方法を取った。保育者のアイデンティティ探求の過程において,コミットメント(主体的・全人的関与;commitment),意識を超えたインキュベーション(孵化;incubation)の過程,対象とかかわって自ら学ぶことの意義が示された。また,現代に残された課題として,保育者の省察が論じられた。