著者
西 香寿巳
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.87-90, 1988-03-15

精神発達遅滞を伴う子どもには,食生活上の問題を持つ者が多く見られ,食事指導は障害児教育の重要な課題の一つである。本論は,偏食傾向の激しい児童の食事指導と,食事行動の変容過程,他の面での成長や変化をまとめたものである。対象とした子どもは,T養護学校の小学一年生,M児,中度精神遅滞で,身辺自立は一応できているものの,強い偏食傾向があった。4月からのT校及び寄宿舎での日常生活の指導・食事指導によって,偏食は著しく減少した。偏食の改善は,Mの行動が意欲的になったこと,表情が明るくなったことなどと,並行してあらわれている。又,教師や友だちへ自らかかわりが,持てるようになってきている。食事指導の特徴は,単に食事行動の改善にとどまることなく,同時に人間同志のかかわりを持つことを狙いとしており,愛情深く厳しく行われる。T校の食事指導には,人間関係を育てる重要な役割が含まれている。