著者
西原 典則 西川 正雄 堀口 毅 稲永 醇二
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.71-81, 1987-03-16

硝酸化成抑制剤の土壌中における行動を明らかにするため, 粘土鉱物の種類, 有機物含有量, CECなどを異にする3種類の土壌を用いて土壌カラムを作り, 浸透水による薬品の下方への移動を微生物的測定法および化学的測定法により検討した.得られた結果は次のとおりである.1.実験に用いた4種類の硝酸化成抑制剤(Dd, Tu, AM, DCS)の土壌中における移動速度はシラス土壌が他の土壌に比して大きかった.2.比較的溶解度の大きいDdおよびTuは溶解度の小さいAMおよびDCSに比して土壌中における移動速度が大きかった.3.化学的測定法により硝酸化成抑制剤の含有量の大きかったフラクションでは微生物的測定法による硝化抑制率も高かった.しかし, 化学的測定法で硝酸化成抑制剤が検出されなかったフラクションで硝化抑制効果の認められる場合があった.4.微生物的測定法による硝化抑制率のピークの巾は化学的測定法による薬品含有量のピークの巾に比して大きかった.5.Ddについては, シラス土壌において化学的測定法による土壌中含有量と微生物的測定法による硝化抑制率との間に正の相関がみられたが, 黒ボク土および沖積土では相関はみられなかった.AMについては, いずれの土壌においても土壌中含有量と硝化抑制率との間に相関はみられなかった.
著者
西原 典則
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.177-185, 1958-10

稲白葉枯病に対して抵抗性を異にする6品種の水稲について7月4日(移植期), 8月22日, 9月2日, 及び9月20日の4回にわたり葉の圧搾汁液を採取しその滲透圧, 比電気伝導度, 全窒素, 全糖, 乾物, 灰分, 及び有機物含有量を定量して次の結果をえた.1.滲透圧, 全窒素, 乾物, 及び有機物含有率は移植期から9月上旬まで減少し9月下旬には増加した.2.比電気伝導度及び灰分含有率は生育の進むに従い低下した.3.全糖含有率は移植期から8月下旬まで増加し9月上旬には減少したが, その後最上位葉では増加し第3葉では減少した.4.滲透圧, 比電気伝導度, 全窒素, 全糖, 乾物, 灰分, 及び有機物含有率の品種間差異は生育時期及び葉位によつて異り一定の傾向を認めえなかつた.5.比電気伝導度/氷点降下度及び全糖/全窒素は水稲の生育時期によつてその値を異にしたが, 9月下旬において抵抗性品種は罹病性品種に比して比電気伝導度/氷点降下度が小で全糖/全窒素が大であつた.6.全窒素含有率と比電気伝導度, 全糖, 灰分含有率, 及び有機物含有率と比電気伝導度, 灰分含有率との関係を除き, 滲透圧, 比電気伝導度, 全窒素, 全糖, 乾物, 灰分, 及び有機物含有率の間には夫々相関が存在した.
著者
西原 典則 二之宮 哲志 堀口 毅 恒吉 利彦 稲永 醇二 西川 正雄
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.119-130, 1978-03-19
被引用文献数
1

水稲の生育・収量に及ぼすけい酸の時期別影響をみるため, けい酸の供給時期および欠除時期を段階的に変えて水稲を水耕栽培した.得られた結果は次のとおりである.1.けい酸欠除期間に出葉した葉は軟弱で垂れ下がり, けい酸供給期間に出葉した葉は粗剛で直立する傾向を示した.2.草丈はけい酸供給時期が早いほど, またけい酸欠除時期が遅いほど大であった.3.出穂の20日以上前からけい酸を欠除した区では出穂後の籾に褐色の斑点を生じたが, 出穂直後以前からけい酸を供給した区の籾は健全であった.4.水稲のわら重, 根重および精籾重はけい酸供給時期が早いほど, またけい酸欠除時期が遅いほど大となり, 粃重は逆に減少した.5.水稲の収量構成要素のうち一株粒数, 登熟歩合および千粒重はけい酸供給時期が早くなるほど増加した.また一株粒数および千粒重はけい酸欠除時期が遅いほど増加したが, 登熟歩合は栄養生長期以後けい酸を欠除した区では低かった.6.生育初期(7月1日〜7月20日)のけい酸欠除は水稲の収量および収量構成要素に大きな影響を及ぼさなかった.7.各葉位の葉重は出葉後のけい酸供給開始時期が早いほど, またけい酸欠除時期が遅いほど大であった.8.葉身, 葉鞘および根のけい酸含有率は生育初期にはけい酸欠除の影響をほとんどうけなかったが, その後はけい酸供給時期が早いほど, またけい酸欠除時期が遅いほど大であった.9.茎では節間伸長期, 籾殻では出穂期までにけい酸供給をはじめた区のけい酸含有率はいずれも大差なかったが, その後までけい酸を欠除した区はけい酸含有率が低下した.栄養生長期以後けい酸を欠除した区における茎および籾殻のけい酸含有率は著しく低くかった.10.葉身のけい酸含有量において第1葉(止葉)/第2葉比および第2葉/第3葉比はそれぞれ第1葉および第2葉が出葉・充実している時期にけい酸供給をはじめた区が大であった.11.水稲体の各部位におけるけい酸の分布割合はけい酸供給時期の遅いほど葉身および葉鞘部が減少し, 籾および茎部が増加する傾向を示した.また栄養生長期以後けい酸を欠除した区における籾および茎部のけい酸分布割合は著しく小さかった.