著者
西垣外 正行 小海途 銀次郎 和田 貞夫 奥野 一男
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.286-299, 1971-06-30 (Released:2008-11-10)
参考文献数
3
被引用文献数
1

1.1957年から1969年に,大阪,奈良,和歌山の県境を走る金剛山地および和泉山脈のうち,二上山から和泉葛城山までの尾根づたい約40km,幅1kmの範囲で,クマタカの繁殖生活に関する調査を行なった。2.この報告は,12年間に発見された19巣をもとにして,繁殖全期間中,巣場所選定から巣造りまでを扱う。3.本地方におけるクマタカは,1月下旬から2月初旬に巣造り開始の兆候を現わす。4.巣造り期に風雪害による巣に被害が生じた際,営巣が中断され,新に再営巣する。5.巣造りに要する日数はおよそ30日位である。6.本種は自らの古単を利用することがわる。7.営巣樹における巣の位置は,樹幹,樹頂,枝先の3つの型がある。枝先型は本種の特性とみなされる。8.巣の大きさは,直径150cmから80cm位のほぼ円型,巣の厚みは,最大85cmから最小25cm位である。9.産座の材料には,アカマツまたはスギを主とし,ヒノキ,五葉マツを混じえる。いずれも青葉のつらた小枝が使用される。10.巣台に使用される材料は,アカマツの枯枝が主で,最大直径3.5cm,長さ110cmの木片が使用されることがある。11.営巣地点の標高は,250mから600m位で,各主峰に対して1/2位(450m)に位置する事が多い。12.営巣地点と人家の距離150mという例がある。13.営巣林は赤松の純林84%,杉の純林5%,混合林(ヒノキ林にアカマツの混合)11%である。14.営巣樹の大きさは,胸高直径39cm,高さ約5m以上の樹木が必要とされる。15.営巣樹はアカマツ94%,スギ6%である。16.営巣林内の巣の位置は,垂直的には下層部が多く,平面的には何ら特微がない。17.各巣の位置の年変化は,平均590m位である。