著者
西堀 乙彦
出版者
千葉大学
雑誌
千葉医学会雑誌 (ISSN:00093459)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.15-21, 1953-05-28

酵素的燐酸転移反応は数多く証明されてきてゐるが,かゝる燐酸転移にはGreen及びColowickが指摘してゐる如くadeninenucleotidが潤与するのが常である。これに対し,AxelrodはP-Nitrophenol-燐酸(NPP)を用い,Nucleotidの関与しない分子間燐酸転移反応の存在することを発見した。この報告によると人尿,シトロンの実などにある酸性燐酸酵素は,NPPの水解と共軛して共存アルコールを燐酸エステル化せしめる。これに対しGreen及びMeyerhofは,小腸のアルカリ性燐酸酵素がアセチル燐酸(ΔF=-15000cal),クレアチン燐酸(ΔF=-11500cal),燐-ピルビン酸(ΔF=-14800cal)を燐酸供与質として,グリセリンへの燐酸転移を触媒し得ることを認め,且その際の転移燐酸量は供与質の含む遊離エネルギーの大小に比例することを報告し,Axelrodの示したNPPよりの燐酸転移を特殊且例外としたが,その後酸性燐酸酵素(精液)による燐酸転移実験では,かゝる比例関係の存在しない事が報告されてゐる。私は一般的に,諸型のMonoesteraseがNPPよりアルコール性OH化合物への燐酸転移を触媒し得ることを証明し,且かゝる燐酸転移の機序を解明し得たので此処に報告する。