- 著者
-
信田 裕
北村 謙
大井 衣里
西尾 利樹
- 出版者
- 一般社団法人 日本透析医学会
- 雑誌
- 日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
- 巻号頁・発行日
- vol.54, no.7, pp.375-379, 2021 (Released:2021-07-28)
- 参考文献数
- 29
症例1は78歳男性.回転性めまいを主訴に来院し,著明な腎機能障害を認めた.入院後に会話の辻褄があわなくなり,不穏が出現した.症例2は72歳女性.両側下肢の脱力と構音障害を主訴に来院し,症例1と同様に腎機能障害を認めた.2症例ともに腎機能障害の既往はなく,来院数日前に近医でバラシクロビル3,000 mgと非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を処方されていた.頭部CT,MRIでは明らかな頭蓋内病変を認めず,これらはアシクロビル脳症であると考えた.バラシクロビル,NSAIDsを中止し補液を行ったが,2症例ともに腎機能障害および神経症状の改善を得られず第2病日に血液透析を開始した.その後,腎機能は改善し神経症状も消失したため透析を離脱した.腎機能が正常であっても高齢者ではバラシクロビルによって腎障害や神経症状が出現する場合があり注意が必要である.