- 著者
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西山 和郎
澤津橋 基広
梅﨑 俊郎
- 出版者
- 耳鼻と臨床会
- 雑誌
- 耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
- 巻号頁・発行日
- vol.62, no.4, pp.128-135, 2016-07-01 (Released:2017-07-01)
- 参考文献数
- 13
舌骨は舌骨上筋群、舌骨下筋群の付着部位、咽喉頭のフレームとして嚥下や気道の開存に重要な機能を果たしているが、その解剖学的特徴のため舌骨骨折の報告は少ない。今回、われわれは嚥下機能評価が可能であった舌骨骨折の 1 例を経験した。症例は 35 歳、男性。工事現場の足場から転落し、前頸部を強打した。約 15 cm の横裂創と舌骨上筋群、舌骨下筋群の断裂を伴う舌骨骨折を認めたため、断裂した筋肉の修復を含む舌骨の外科的整復を行った。術後に嚥下評価を行い、後遺障害を残さずに軽快した。本邦および海外におけるこれまでの報告では、舌骨骨折の治療については、基本的には保存的加療を行い、下咽頭−喉頭に穿孔がある症例や、骨片が突出するなどして嚥下や気道が傷害される症例には外科的治療を検討するべきと報告されている。これに加えて、本症例の経験から、舌骨骨折に舌骨上下筋群の損傷断裂を認める症例には、早期の筋断裂の修復と舌骨の位置整復が重要であると同時に、その修復の際に、上喉頭神経内枝の温存に留意することが必要であると考えられた。