著者
鉄谷 龍之 西山 忠良 高野 真矢 石井 信夫 安藤 元一
出版者
森林野生動物研究会
雑誌
森林野生動物研究会誌 (ISSN:09168265)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.19-25, 2018-03-30 (Released:2021-04-01)
参考文献数
23

静岡県伊東市に生息する特定外来生物アムールハリネズミErinaceus amurensisについて,2007年,2008年,および2012年の6月から11月までの期間に,手捕りによってゴルフ場3カ所と公園1カ所で捕獲された113個体の胃内容物を分析した.胃内容物は地表性の昆虫類が大部分を占め,1個体当たりの餌品目数(平均±SD)は3.2±1.3であった.出現頻度では,芝生の害虫としてよく見られるスジキリヨトウSpodoptera depravataの幼虫をはじめとするチョウ目Lepidoptera(81.4%)が最も多く,オサムシ科Carabidae(15.0%),シデムシ科Silphidae(11.5%),コガネムシ科Scarabaeidae(17.7%)などのコウチュウ目Coleoptera(74.3%),バッタ目Orthoptera(20.4%),ハチ目Hymenoptera(15.9%)がそれに次いだ.胃内容物中におけるコウチュウ目とチョウ目の幼虫の増減と発生の季節変動が同様であることから,アムールハリネズミに餌の選好性はないと考えられる.捕獲時間ごとの胃内容物の乾燥重量は夜間を通じて増加したことから,本種は夜間を通じて採食していると考えられる.