- 著者
-
大田 一郎
西山 英治
- 出版者
- 熊本電波工業高等専門学校
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2006
本研究では,高圧配電線の電流計測システム用のフローティング電源回路を開発する.電源回路の仕様は,3,810V/60Hzの配電線対接地電圧から直流±12Vのデュアル出力0.5Wを得るもので,キャパシタ分圧により配電線の対接地電圧からエネルギーを得る方式なので,重たい電源用コイルを用いずに回路を構成できる.前年度の研究開発で,hspiceによるシミュレーションと個別部品による回路試作によって,基本的な特性を明らかにした.平成19年度は,研究の最終年度で,過渡応答試験と温度試験およびノイズ試験について検証を行う.まず,過渡応答試験では(1)停電,復帰,(2)半周期欠落瞬時停電,および(3)n周期欠落停電の過渡応答を実測した.その結果,hspiceによるシミュレーションとほぼ同様の結果が得られ,停電から復帰したときは1.5秒後に出力電圧が±12Vに達することがわかった.配電線監視システムは通電時に正常測定ができればよく,停電復帰後の1.5秒はさほど問題はない.なお,半周期欠落や瞬時停電は時々生じるが,回路の時定数が576mと長いため100ms(6周期)の欠落停電が生じても出力電圧は10V以上を保持できることを確認した.次に,温度試験について,周囲温度を-15℃〜80℃変化した場合の諸特性を測定した結果,高耐圧セラミックキャパシタを容量が温度範囲内で25nF以上であれば問題ないことがわかった.また,出力電圧の温度依存性は使用するツェナーダイオードの温度特性で決まり,試作回路では±4%以内の出力電圧変動率であった.提案回路はスイッチング方式ではないので,問題となるようなノイズの発生はない.なお,落雷による擬似サージ電圧を印加した場合の諸特性については,試験設備がないため,実用化になるときに企業と共同で試験する予定である.