著者
西川 みな美
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.1-15, 2021 (Released:2021-12-24)
参考文献数
70

本論の目的は,同業態競合店舗の多い市場に出店する「競争的出店」,自社店舗の多い市場に出店する「ドミナント出店」という対照的な2種の出店行動に注目し,チェーン小売企業がいずれの戦略を採用するのか,なぜその選択が同業態企業間で異なるのかを,理論的・実証的に説明することである。そこで,延期-投機モデルに依拠して,チェーン小売企業の出店行動は企業固有の在庫調整能力に依存するという理論仮説を導出し,GMSチェーン13社204店舗を対象に実証分析を行った。その結果,①在庫調整能力の低い企業は,競争的出店を避け,ドミナント出店を選択する一方で,②在庫調整能力の高い企業の出店行動は,企業の規模と収益性に条件づけられており,③規模が小さい高回転型企業は競争的出店を避ける一方で,収益性が高い高回転型企業はドミナント出店を避ける傾向を持つことが見出された。