著者
竹石 敏治 大土井 智 西川 正史
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.45, no.9, pp.537-544, 1996-09-15 (Released:2010-09-07)
参考文献数
7
被引用文献数
1

現在のところ, トリチウム取扱施設において室内空気中に放出されたトリチウムを回収するたあに, 加熱された貴金属触媒塔およびその後段の冷却された吸着塔で構成されるトリチウム回収装置が用いられている。しかしこの方式では, トリチウムと同時に空気中に含まれる大量の水蒸気も同時に回収されるため, 吸着塔が大きくなり, 触媒塔の加熱装置や吸着塔の冷却装置の故障の際には, トリチウムの回収性能が低下するなどの欠点がある。本報告では, 冷却装置を設けない吸着塔と, その後段に加熱装置を設けない触媒塔により構成されたトリチウム回収システムを提案する。この方式では, 前置吸着塔において処理ガス中の水蒸気が, 触媒の酸化性能を阻害しない程度まで捕捉されることにより, 触媒の活性が維持される。またトリチウムが貴金属触媒の親水性担体に酸化された後に, 吸着や同位体交換反応によって, 入口ガスよりも高いT/H比で捕捉できる。
著者
深田 智 西川 正史
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

溶融塩Flibeはヘリカル型核融合動力炉(FFHR-2)の先進的液体ブランケット概念設計に取り入れられ、強磁場、強中性子束環境においても良好な熱除去とトリチウム増殖が期待されている。しかし、溶融塩中のトリチウム取扱技術が難しい事、トリチウム閉込めと回収が難しい事が予想され、世界的に見ても実証研究例が非常に少なかった。本研究では、トリチウム回収装置設計に必要なFlibe溶融塩内の金属材料中の水素同位体透過率、金属BeによるFlibeの酸化還元制御等を実験的に検討し、目標となるFlibe中のトリチウム濃度を1ppm以下、トリチウム漏洩率を10Ci/Day以下に制御するブランケット構成を実験的に確証することを目的とする。実験と解析から次のことが明らかにされた。1.Flibe中の重水素透過率をNi製二重管式透過装置を使って初めて測定した。求めた溶解度から未精製Flibe中の水素同位体はH^+の形で存在し、H^+とF^-イオンの移動は相互に電荷中性になるように拡散することが分かった。2.Flinak中の水素透過係数を測定し、水素は分子状で存在することが分かった。これはFlinakではFlibeに見られるようなBeF_4^<2+>の分子ネットワークが存在せず、溶融塩中でF^-イオンは常にLi^+,K^+,Na^+イオンと局所的に強い結合をして局在するからと考えられる。3.溶融Flibe中に金属Beを浸すことにより、酸化還元制御可能であることが分かった。これより、Flibe中に存在していた自由F^-イオンが溶解したBeと反応し、BeF_2の分子結合をして、F^-イオンが消費され、水素イオンは分子状で存在するようになると考えられる。従って、核融合炉内のトリチウムを分子状に制御可能であることが分かった。4.1GWの熱出力で発生するトリチウムを許容されたトリチウム漏洩率に保持するためには、高いトリチウム回収率が必要である。そのための、透過窓、気泡塔、スプレー塔の設計方程式を構築し、装置の規模を評価した。