著者
宮本 元 西川 義正
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.9, pp.601-608, 1979-09-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
22

牛射出精子を37°Cでインキュベート,4°Cで液状保存,または凍結•融解したときの精子生存性におよぼすカフェイン添加の影響について検討し,つぎの成績をえた.1. 塩化カルシウムを除去したクレーブスーリンゲルリン酸緩衝液(Ca欠KRP液)に洗浄精子を浮遊させ,37°Cで8時間インキュベートした.外因性基質が存在しない場合も,カフェインを添加した精子は,対照の無添加のものに比べその添加直後に運動性が高まり,2時間後も対照より高い運動性が維持された.しかし,4時間以上のインキューベート後には,カフェインを添加した精子の運動性は対照よりかえって低下した.外因性基質であるぶどう糖,果糖,乳酸塩ピルピン酸塩の存在下でカフェインを添加すると,約5時間にわたって精子の運動性が高められた.2. 牛精子を卵黄クエン酸ソーダ液で希釈し,37°Cで6時間インキュベートまたは4°Cで7日間保存した.いずれの場合も,カフェイン添加によって,対照の無添加のものに比べ精子の運動性が高まり,生存時間が延長された.精液を37°Cでインキュべートまたは4°Cで保存すると,カフェイン濃度がそれぞれ5.4~18mMおよび5.4~13.5mMのとき,比較的高い精子生存性が維持された.3. 卵黄クエン酸ソーダ液で希釈した牛精子を4°Cで保存し,保存3日目にカフェインを添加した後さらに4日間保存した.カフェイン添加直後に精子の運動性が高まり,さらに生存時間の延長が認められた.4. 7%のグリセリン存在下で隼精子を凍結する場合,凍結前にカフェインを添加した精子にグリセリンを加えると,グリセリン添加直後および凍結•融解後の精子の運動性は,カフェイン無添加の対照より低下した.これに対して,凍結•融解後にはじめてカフェインを添加すると,対照に比べ精子の運動性が高まり,生存時間が延長した.10mMのカフェイン添加の精子に各種濃度のグリセリンを加え,4°Cで保存すると,グリセリン濃度が0および2%の精子はカフェイン添加によって対照のカフェイン無添加のものより運動性が優れていたが,7および10%の精子は対照のものより運動性が低下し,牛精子の生存性におよぼすカフェインの影響は,グリセリン濃度と関連のあることが判った.
著者
宮本 元 西川 義正
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.205-210, 1979

°C付近通過の冷却速度が,牛精液の過冷却の程度におよぼす影響,ならびにその過冷却の程度が,牛の凍結•融解精子の生存性におよぼす影響について検討し,つぎの知見をえた.1. 最終グリセリン濃度が7%(v/v)になるように,卵黄クエン酸ソーダ液で希釈した1mlの精液をビニール製ストローに注入し,0°C付近を毎分0.5~109.8°Cの速度で通過冷却すると,過冷却点(過冷却が破れて氷晶の成長が始まる温度)は-4.0~-13.8°Cの範囲にあった.1mlの精液をガラスアンプルに注入し,0°C付近を毎分0.6~21°Cの速度で通過冷却すると,過冷却点は-3.0~-9.2°Cの範囲にあった.2.過冷却が破れ凍結現象が始まった後の冷却速度が同じであれば,希釈精液の過冷却の程度は,-196°Cに凍結した後の牛精子の生存性に影響をおよぼさなかった.3. 希釈精液の過冷却が自然に破れても,植氷によって破れても,凍結•融解牛精子の生存性に差は見られなかった.