著者
西村 圭織 栢下 淳
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.180-189, 2022-12-31 (Released:2023-04-30)
参考文献数
32

【目的】通所リハに通う要支援・要介護高齢者を対象に,低栄養と関連する要因を口腔・嚥下機能,食事摂取頻度に焦点をあて,低栄養の人数割合,口腔・嚥下機能,食事摂取頻度の調査,検討した研究である.これらの結果をもとに適切な栄養管理方法について考える.【対象者および方法】2017 年11 月から2018 年6 月まで,通所リハを利用している65 歳以上の地域在住高齢者で要支援1,2,要介護1~3 の118 名を対象とした.また,研究方法の理解が可能な者で,研究に同意を得られたものとした.研究デザインは横断研究である.調査項目は,栄養状態(Mini Nutritional Assessment Short-Form,BMI),口腔機能[ 最大舌圧値,摂食状況のレベル(FILS),オーラルディアドコキネシス(OD),咀嚼能力の評価],嚥下機能[改訂水飲みテスト(MWST),EAT-10,水分の一回嚥下量],食事摂取頻度(食品多様性スコア,食習慣)とし,栄養状態の評価より低栄養群,低栄養のリスク群および良好群の3 群に分け,統計学的解析を行った.【結果および考察】低栄養群が23 名(19.4%),低栄養リスク群が63 名(53.4%),栄養状態良好群が32 名(27.2%)であった.口腔・嚥下機能では,栄養状態と舌圧,水分の一回嚥下量,EAT-10 が関連していた(p<0.05).食品摂取多様性スコアでは,低栄養群で栄養状態良好群と比較して低い傾向がみられた(p=0.059).低栄養群では食品摂取の多様性スコアの点数が低く,特にたんぱく質の多い食品の摂取が少ないことがわかった.食物摂取頻度では,栄養状態と鶏肉および麺類に有意な関連がみられ(p<0.05),いずれも栄養状態良好群に比べて,低栄養群が少なかった.低栄養群は口腔・嚥下機能の項目および食品摂取の多様性スコアと関連がみられたことから,口腔・嚥下機能の障害が食事に影響していることが考えられる.【結論】低栄養は口腔・嚥下機能低下,食事摂取頻度に関連していた.要支援・介護になる前の段階から,口腔・嚥下機能低下予防を含めた低栄養対策を行うことが重要と考えられた.