著者
西村 智貴
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

従来の薬物輸送システム(DDS)は、「薬」を運搬体に内包させ、がんなどの疾患部位へと送達する。しかし、運搬体からの薬の漏出に伴う副作用と薬効低下が問題となっており、安全かつ治療効果の高い、新しい医療戦略が求められている。このような背景のもと、本研究では、抗がん剤ざどの薬を必要とせず、がん局所で薬を合成する好中球類似のナノデバイスを創製し、従来型のDDSの課題を黒風した治療システムの構築を目的とした。本年度は、がん周囲のpHで親水化するポリマーの合成及び先行研究の糖鎖ポリマーとの混合により、がん局所でとう可能が更新するベシクルの構築を行った。先行研究で開発したベシクルは、イオン性親水性分子の透過が遅いため、酵素反応が遅い。そこで、がん周囲の環境でプロトン化し、親水化するポリマーを用いて透過性の亢進を試みた。そのために、弱酸性領域にpKaを持つDiisopropyle amineからなるポリマーを銅触媒リビングラジカル重合により合成し、糖鎖セグメントとのカップリングを行った。得られたポリマーは、弱酸性領域にpKaを持ち、そのpKa以下でポリマーの親水化することが判明した。このポリマーと先行研究で得られた糖鎖ポリマーを混合することにより、ハイブリッドベシクルを形成することを電子顕微鏡観察ならびに放射光小角散乱測定より確認した。