- 著者
-
今井 奨
西沢 俊樹
- 出版者
- 国立感染症研究所
- 雑誌
- 基盤研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 1999
それ自身う蝕誘発性をもたず、う蝕原性細菌の有機酸産生や歯の再石灰化などに関わりをもってう蝕の発生を低下させるような、従来とは異なる機能性オリゴ糖の開発と、それを用いたう蝕予防方法の開発を目的として本研究を遂行した。馬鈴薯澱粉に液化型α-アミラーゼを反応させてリン酸化オリゴ糖(POs)を調製した。このPOsについてカルシウムリン酸沈殿阻害効果や、う蝕原性細菌であるS.mutans MT8148株、S.sobrinus 6715株を用いてPOs自身の発酵性とスクロースの発酵に及ぼすPOsの影響を調べた。また、人工口腔装置を構築し、ミュータンスレンサ球菌がスクロース存在下で形成する人工バイオフィルムの量、人工バイオフィルム下のpHおよびpH低下によって起こるエナメル質の脱灰に及ぼすPOsの影響を本装置によって評価した。その結果、POsはin vitroでのカルシウム-リン酸沈殿阻害効果を示し、カルシウム可溶化作用のあることが分かった。また、POs自身はS.mutans、S.sobrinusによって資化されず、培地pHを低下させないことが分った。また、POsは両ミュータンスレンサ球菌およびActinomyces viscosusによるスクロースの発酵に由来するpH低下を濃度依存的に抑制した。このpH低下抑制効果はリン酸化オリゴ糖のもつ緩衝作用に依ることが示唆された。さらに人工口腔装置による実験系で、Ca型のPOsはS.sobrinus、S.mutansの人工バイオフィルム沈着に起因するpH低下に対して抑制的に作用し、エナメル質表面の人工バイオフィルム量、エナメル質脱灰も抑制した。以上よりリン酸化オリゴ糖はう蝕予防用のオリゴ糖としての望ましい性質を備えており、これを用いた種々の予防方法に応用可能であることが確認された。