著者
磯部 勝孝 石原 雅代 西海 陽介 宮川 尚之 肥後 昌男 鳥越 洋一
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.17-21, 2015 (Released:2015-02-23)
参考文献数
10
被引用文献数
1

播種時期の違いによる出芽率が異なる原因を明らかにするため,播種時の土壌の水ポテンシャル,気温並びに播種深度違いがキノアの出芽に及ぼす影響を明らかにした.圃場実験では6月,8月および10月にキノアの種子を播種したところ,8月播種区は他の区に比べ出芽率が低かった.8月播種区では他の区に比べ播種後の土壌の水ポテンシャルと温度が高く推移した.しかし,人工気象室のポット試験では20℃から34℃の範囲では最終的な出芽率には大きな違いはなかった.また,出芽に対しては播種時の土壌の水ポテンシャルが−5 kPaから−20 kPaの範囲では出芽率に大きな違いはなかったが,−40 kPaになるとほとんど出芽しなかった.このことから,播種期の違いによるキノアの出芽率の変動には播種時やその後の土壌の乾燥状況が影響していると考えられる.また,同じ水ポテンシャル間で播種深度がキノアの出芽率に与える影響をみると,播種時の水ポテンシャルが−20 kPaの時では播種深度が1.0 cmの時に最も出芽率が高くなり,それより播種深度が浅くなっても,深くなっても出芽率は低下した.同様の傾向は水ポテンシャルが−5 kPaや−10 kPaの時でもほぼ同様であった.従って,土壌の水ポテンシャルの変化を考慮した場合,最も適するキノアの播種深度は1.0 cmであると考えられた