著者
池田 勇 山田 昌彦 栗原 昭夫 西田 光夫
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.39-45, 1985
被引用文献数
3 58

旧園芸試験場 (現在, 果樹試験場興津支場) における30年間にわたるカキ交雑育種の調査結果をとりまとめ, カキの甘渋の遺伝様式を検討した.<br>1. PCNA同志の交雑からはほとんどPCNAしか生じなかった. PCNAと「PCNA以外」の交雑及び「PCNA以外」同志の交雑からは, PCNAはほとんど生じなかった. これらのことから, PCNAと「PCNA以外」は質的遺伝をし, 前者は後者に対して劣性であると考えられた. PCNAと「PCNA以外」とを交雑して得た後代のPCAをPCNAに戻し交雑した場合には, 15%程度の割合でPCNAを生じた.<br>2. 「PCNA以外」における脱渋性の遺伝は, 育種的にはPVNA, PVA及びPCAの3段階に区分されるしきい形質として, 量的遺伝をするととらえるのが有効であると考えられた. PCA同志の交雑からはPVNAはほとんど生じなかったが, PVNA同志の交雑からはPCAがかなり生じた.<br>3. PCNAとPCAとの交雑において, &lsquo;富有&rsquo;は他のPCNA品種に比べて特異的にPVNAまたはPVAを多く分離した.