著者
西田 光男 飯塚 忠彦
出版者
日本頭頸部癌学会
雑誌
頭頸部腫瘍 (ISSN:09114335)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.291-296, 1998

Supraomohyoid Neck Dissection は口腔扁平上皮癌症例におき, 高頻度でリンパ節転移が認められるオトガイ下・顎下, および胸鎖乳突筋後縁より前方かつ肩甲舌骨筋より上方に位置する上中深頸部のリンパ節群のみを一塊切除する領域頸部郭清術である。胸鎖乳突筋, 副神経, 内頸静脈は温存する。一般的には選択的 (予防的) に適用されているが, 一部の症例では治療的にも実施されている。本術式は節外浸潤症例を除き, 頸部のリンパ組織が頸筋膜, 血管鞘により筋肉, 血管実質から隔絶されているという解剖により成立し, この fascia をリンパ組織とともに鋭的に切除すれば根治性を失わず, かつ筋肉, 神経, 血管の温存が可能で形態, 機能障害などの後遺症は最小限となる。しかし適応症例は厳選されねばならない。手術手技上, 上内深頸領域の郭清が難しく, 頭板状筋, 肩甲挙筋面から完全に郭清し, その郭清組織は同領域から副神経の下面を通して潜らせ前方へ運ばねばならない。