著者
若松 謙一 西田 実継
出版者
岐阜大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

銀河間衝突が銀河中心核の核活動、特にセイファ-ト現象やクエサ-と深く係わっているのではないかとの仮説は1985年に出され、最近大きな関心を呼んでいる。衝突に依って相棒銀河から剥ぎ取られたガスが銀河中心核へと隆り積もり、爆発的星の形成を引き起こし、ブラック・ホ-ルへガスを供給して中心核を活性化する、と言うのである。銀河間衝突で形成されたことがはっきりしているリング状銀河について、セロトロロ天文台で得たCCD撮像分光デ-タを本研究費で購入したワ-クステ-ションを用いて解析を行い、現在までに以下の結果を得た。1.約40個のリング状銀河の中心核は輝線や強いバルマ-吸収線を示しており,星形成等の激しい核活動が起こっている事を見いだした。2.輝線を示す銀河の大部分はライナ-(LINER)やスタ-・バ-スト型であり,セイファ-ト2型はわずか3個、1型は新たには1個も発見出来なかった。3.また、多くのリング状銀河がIRAS赤外線源であることもつきとめた。4.以上の事より、リング状銀河では予想通りの形成は極めて活発ではあるが、セイファ-ト1型が少なかったことより、銀河間衝突がブラック・ホ-ルへガスを供給して銀河中心核を活性化する、とのシナリオを検証するには至らなかった。5.その理由として、リング状銀河を形成する衝突は銀河ディスクを垂直につっきるタイプなので、ガナを中心核へ落し難しくなっているとも考えられるが、その割にはスタ-・バ-スト型が多いことからそう単純でもなさそうである。6.リングを持った楕円銀河であるHoagーtype銀河ではバルマ-吸収線が強く、10億年以内に激しい星の形成があったと思われる。なお、平成4年7月にもう一度セロトロロ天文台で観測できる事となったため、この問題をより一層突き詰めたいものである。