著者
今井 崇裕 北川 朋子 西部 俊哉 西部 正泰
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.5, pp.196-201, 2007-05-15 (Released:2009-02-27)
参考文献数
9
被引用文献数
5 4 7

爪楊枝誤飲による消化管穿孔はまれで, 患者が誤飲を自覚していないことが多く, 爪楊枝がX線透過性であることから術前診断は困難とされる。今回われわれは術前診断が可能であった手術症例を経験した。患者は73歳の男性, 1週間前に義歯 (上顎, 総義歯) と一緒に何かを飲み込んだと自覚。3日後, 臀部周囲の熱感, 疼痛が出現したが放置していた。39度の高熱, 臀部及び陰嚢部の腫脹が増強したため救急車で搬送された。受診時下腹部に圧痛を認めたが, 腹膜刺激症状は認めなかった。入院時の血液検査では高度の炎症所見を認めたが, 単純X線, US及びCT検査では異物様の陰影を認めなかったものの, 直腸周囲から膀胱の辺縁を介して恥骨の前面に貯留したエアー像を確認した。皮下のエアー像は左側腹部脾臓レベルまで上行していた。肛門指診したところ直腸内に異物を触れ, これを用手的に摘出したところ約6cmの爪楊枝であった。爪楊枝誤飲による直腸穿孔と考え, 同日緊急に全身麻酔下でドレナージ, 洗浄及び人工肛門造設術施行した。以後, 全身管理, 創部の洗浄及びドレナージを繰り返し, 経過は良好である。今回, 本邦では非常にまれな爪楊枝誤飲による直腸穿孔の1例を経験したので報告する。