著者
西野 正見 吉原 計一 前田 弘
出版者
公益社団法人日本航海学会
雑誌
航海 (ISSN:0450660X)
巻号頁・発行日
no.71, pp.1-9, 1982-03-15

漁撈操船中の主機運転パターンは,それぞれの漁業の作業形態に応じた特有の型をとる。その典型的な例として1980年3月9日から18日まで対馬近海で土安丸(49トン,230馬力,FRP船)によって行われたフグ延縄揚縄作業32時間48分にわたる記録を分析し次の結果を得た:1.揚縄作業中の主機運転は短時間の前進と停止の繰り返しであり,前進時間(最短1秒より最長75秒まで,平均8.2秒,1秒単位)と停止時間(最短1秒より最長207秒まで,平均29.1秒,5秒単位)の頻度分布は対数正規分布に適合する。2.一連のデータに関する前進・停止時間(いずれも長さy秒をlog(y+1)に変換した値を用いる)の平均・偏差を従属変数とし操業条件を説明変数とする重回帰式を変数最良選択法によって求め,次のことがわかった。前進は風・潮流による船の漂流と揚縄作業の進行に対し船位を調整するためで,大きな調整を必要とする時ほど,すなわちあまり長い間停止したままでおれない時,船首方向から風を受ける時,左舷からの潮流を受けて船が縄の上に流される時は長い。3.前進時間の偏差は,前進時間が長く停止時間の偏差が大きい時ほど大きい。4.停止時間の長さは,風と潮流を受けて流されながらでも位置を調整せずに揚縄を続けることのできる時間の長さで,船が縄の上に流されにくい時ほど,すなわち右舷からの風・左舷に向かう潮を受ける時及び風力が弱い時ほど長い。5.停止時間の偏差は,長い間停止したままでおれる時及び右舷からの潮を受ける時は小さい。6.前進時間・停止時間のオートコレログラムとクロスコレログラムによれば,相次いで行われる何回かの前進と前進・停止と停止,前進と停止及び停止と前進の間に連続性(関連性)は認められない。