著者
原田 尚美 西野 茂人 広瀬 侑 木元 克典
出版者
国立研究開発法人海洋研究開発機構
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2015-05-29

本研究の目的は、極域に生息する海洋生物特に、食物網の底辺を支える植物・動物プランクトンに着目し、昇温や海洋酸性化に代表される環境の激変に対してこれら低次生物がどのように応答するのかを明らかにすることを目的としている。具体的には、西部北極海を研究対象海域とし、1)酸性化の脅威にさらされている炭酸塩プランクトンの応答の定量的評価、2)亜寒帯域に生息する植物プランクトン種の温暖化による極域進出の可能性の把握、3)他の海域に生息する種には見られない極域プランクトン種の特異的な機能を明らかにすることを目的としている。平成30年度は以下の研究を実施した。1海洋観測:西部北極海に2点設置したセジメントトラップ係留系の回収ならびに再設置とともにCTD/採水観測、各種センサーによる観測も行う。また、回収された係留系に蓄積された1年分の各層の流向・流速データについて衛星観測による海氷広域分布データとともに時系列の解析を行う。以上の計画どおり実施した。2海洋観測試料分析/データ解析ならびに遺伝子分析手法開発:回収された時系列セジメントトラップの生物起源粒子について検鏡による群集組成と18SrRNA配列を用いた定量的群集解析を実施する計画であった。検鏡観察による群集組成解析はほぼ計画通り実施したが、遺伝子解析については、再度、ホルマリン試料からの遺伝子レスキューの過程の見直しを実施しているところである。3プランクトンの培養・飼育実験ならびにMXCT法開発:北極海由来のプランクトンの炭化水素合成系酵素遺伝子について、現在も引き続き探索を行なうとともに、炭化水素合成量がこれまでより単位細胞あたり1桁多くなるような生育培養条件を見出す事ができた。MXCT法については、新たにオートサンプラー開発を行い、プランクトンの骨格密度測定の効率を上げ、高精度な解析が短時間で可能になるようシステムの高度化を行った。