- 著者
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藤本 智久
岡田 祥弥
行山 頌人
森本 洋史
中島 正博
西野 陽子
皮居 達彦
田中 正道
久呉 真章
- 出版者
- 公益社団法人 日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement
- 巻号頁・発行日
- vol.2012, pp.48100114, 2013
【はじめに】 当院では,極・超低出生体重児に対して発達フォローアップとして新版K式発達検査を実施しており,その経過で,発達の遅れを認める児を経験することがある.その中には発達がキャッチアップする児とキャッチアップせずに発達遅滞や発達障害と診断される児がいる.今回,修正18ヶ月までにキャッチアップした児としなかった児について検討したので報告する.【方法】 当院 周産期母子医療センターに入院し,発達フォローアップの依頼のあった極・超低出生体重児(入院中に明らかな脳障害や染色体異常を認めた児を除く)で,修正12ヶ月前後および修正18ヶ月前後の新版K式発達検査において各領域の発達指数が85未満の値を示した児のうち,継続調査が可能であった53名(男児23例,女児30例)を対象とした.さらに,修正18ヶ月までにキャッチアップを認めた児(キャッチアップ群)21例(男児8例,女児13例)と修正18ヶ月でキャッチアップを認めなかった児(非キャッチアップ群)32例(男児15例,女児17例)について,在胎週数,出生体重,Apgar Score,修正3ヶ月前後のGeneral Movements(GMs)評価,新版K式発達検査の経過および予後について検討した.なお,統計学意的検討は,t-検定およびMann-WhitneyのU-検定,カイ2乗検定を用いて行い,危険率0.05以下を統計学的有意とした.【説明と同意】 対象児の保護者には,フォローアップについての説明および情報の取り扱いについて紙面および口頭にて説明し,同意を得て実施した.【結果】 周産期情報の比較では,在胎週数は,キャッチアップ群が,平均31.0±3.2週,非キャッチアップ群が,平均29.1±3.3週,とキャッチアップ群の方が統計学的有意に長かった(P<0.05).しかし,出生体重およびApgar Score 1分値,5分値では有意差を認めなかった.また,修正3ヶ月前後のGMsの結果では,キャッチアップ群でFidgety Msを認めたものが17例,Abnormal Fidgety Ms(AF)を認めたものが,4例であった.非キャッチアップ群では,Fidgetyを認めたものが19例,AFを認めたものが13例であった(有意差なし).新版K式発達検査の経過をみると,12ヶ月において,姿勢運動領域(PM領域)のDQは,キャッチアップ群が80.5(以下中央値),非キャッチアップ群が87.4と統計学的有意にキャッチアップ群が低かった(p<0.05).しかし認知適応領域(CA領域),言語社会領域(LS領域),全領域では,有意差を認めなかった.さらに18ヶ月において,PM領域のDQは有意差を認めなかったが,CA領域,LS領域,全領域のDQではキャッチアップ群が有意に高値を示した(p<0.05).予後について比較すると,最終的に2歳半以降で自閉症などの発達障害を認めた児は,キャッチアップ群が1例,非キャッチアップ群は8例であった(有意差なし).【考察】 今回の結果より,キャッチアップ群と非キャッチアップ群を比較すると周産期の情報では,統計学的に有意差を認めた項目は,出生時の在胎週数のみであった.横塚らは,早産児では在胎期間が短くなるほど修正月齢よりもさらにゆっくりとした発達を示し,3歳頃にキャッチアップすることが多いと述べており,在胎期間は,キャッチアップの有無を考える上でも重要であることを示していると考える.また,修正3ヶ月前後のGMs評価では,統計学的有意差は認めなったが,非キャッチアップ群の方がAFを多く認めた.GMsは,予後予測としては信頼性の高い評価であるが,観察者の習熟度によるところが大きく有意差が出なかったのかもしれない.また,新版K式発達検査の経過をみると,12ヶ月での運動発達の遅れは,18ヶ月までにキャッチアップされることが多いが,認知面,言語面での発達の遅れは18ヶ月になるにつれて目立ってくることを示している.また,予後についても,キャッチアップ群は1例,非キャッチアップ群が8例に発達障害を認めたことより,修正18ヶ月での言語社会性の発達の遅れは,7割以上は正常発達にキャッチアップしていくが,自閉症など発達障害に注意して経過を追っていく必要があると考える.【理学療法研究としての意義】 本研究は,極低出生体重児の発達経過を見ていくなかで,発達の遅れを認める児であっても大半が,キャッチアップを認めるようになることを示しているが,在胎週数や修正18ヶ月での言語発達の状況等によっては,注意して経過を追っていく必要があることなど両親への発達のアドバイスを行う基礎資料としても有用であると考える.