著者
角村 法久
出版者
徳島大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

研究目的 : 申請者は、「研究者の自由な発想に基づく研究」の科研費(JSPS)とその対極にある「政策課題対応型研究開発」のA-STEP (JST)の審査制度に関し、主に次の4つの観点に注目して比較検討を試みることを計画した。1. 審査委員選考方法(例 : 科研費は、審査委員候補者データベースを整備し、JSPS設置の学術システム研究センターで、毎年選考を行っている。)2. 審査委員配置状況(例 : 科研費は1段審査委員を細目毎、2段審査委員を分科毎に配置している。)3. 審査過程(例 : 科研費は、書面審査と合議審査の2段審査制をとっている。)4, 審査制度の変更過程(例 : 科研費は平成25年度応募時に、若手研究Bで複数細目選択制を採用した。)研究方法 : 検討に際しては、公募要領、審査委員名簿、審査規程、審査マニュアルなど、科研費、A-STEPに関するJSPS、JST各々のHPに掲載されている情報を基に審査制度の詳細に迫った。これは、公開情報でどの程度審査制度の実態に迫ることができるかを具体的に実践することで、研究機関の事務職員であれば、誰もが分析できるということを明らかにしたいと考えたからである。研究成果 : 科研費とA-STEPの審査制度の違いとして次のことが分かった。科研費審査委員の特徴 : 科研費採択経験のある研究者←→技術移転に精通する研究者、企業経験者 : A-STEP側 科研費の審査委員選考方法 : JSPSにてPOが候補者DBを用いて選考←→JSTにて選考 : A-STEPの選考方法科研費審査委員配置状況 : 第1段審査委員は細目毎←→書類審査は細目毎(【FS】ステージのみ) : A-STEP側第2段審査委員は分科毎←→面接審査は評価委員が対応また、今回の研究を通じて、各審査制度の仕組みがわかったことを踏まえ、研究支援の立場にある事務職員が、どのように競争的資金を分析すれば良いのか、又研究者にどのようにアドバイスをすればよいのか、一例を示すことが出来た。その他 : A-STEPについては、科研費と比較して必ずしも多くの情報が得られた訳ではなかった。これは、技術移転を目指すA-STEPの性格上、「技術」を理解し、「実用化」の可能性を見抜く力が審査委員に求められるが、そのような能力や知識・経験を持っている人材が少ないからではないかと考えられる。従って、基本的には、継続して専門委員を依頼するほかなく、結果的に科研費の審査委員とは異なり、専門委員名について非公開で対応することに繋がっていると考えた。