著者
角森 史昭
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究では、岩石の一軸圧縮に伴うガス放出の過程を調べた。岩石破壊の直前に大量にガスが放出されることから、地震発生前のガス濃度増加にかなり関与していることが示唆される。地球化学的地震予知研究では、地下水に溶けているガスやイオンの濃度の時間変化が時間に応答するという観測結果に基づいて、そのメカニズムモデルの構築や的確なシグナル観測の技術開発を行ってきている。そこで本研究では、メカニズムモデル構築のための基礎データを得ることを目標とした。使用した試料は、稲田花崗岩でφ50、L100の円柱である。この形状の花崗岩の場合およそ25tの荷重、約2mmの軸方向の変形の後破壊に至る。試料は真空容器内に入れ、4.2kg/sの荷重速度で圧縮した。このときの荷重はロードセルを使用して同時にモニターした。また同時に、破壊に至るまでの亀裂生成率はアコースティックエミッションでモニターした。アコースティックエミッションセンサーは真空容器内で岩石に貼り付けられている。亀裂生成に伴って放出されるガスを精密に分析するために、英国HIDEN社の四重極質量分析計HAL201を使用した。測定をした質量数は、時間分解能を上げるために2,4,5,16,18,28,32,36,40,44とした。これらの質量数をスキャンするのに要した時間は10秒であった。アコースティックエミッションの頻度は、破壊に至る時間の80%程度の時間から指数関数的に増加した。測定されるアコースティックエミッションのシグナルの強さとガスの放出パターンに相関が確実に見られるのは指数関数的な増加が始まってからと判断された。放出されるガスの組成には系統性があるとは言い難く、指標とできるガス種についてはさらに詳細な実験が必要である。一方、当初目標としていた亀裂生成の三次元可視化は、使用したシグナル解析装置の不備により実現できなかったが、解析装置の改良を行うことで可能になると考えられ、ガス発生を引き起こすアコースティックエミッションを特定が可能になることが期待される。
著者
森田 雅明 角森 史昭 松山 諒太朗 森 俊哉
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.91-95, 2013 (Released:2013-02-28)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

三浦半島の活断層群周辺の地下水中のラドン濃度の調査を行った。調査地域の平均の地下水ラドン濃度は5.8±4.8Bq L-1,最高の値は17.2±1.0Bq L-1であった。また,採水地点と断層との間の距離に対してラドン濃度をプロットすると,断層線上の低いラドン濃度の領域の周りに高いラドン濃度の領域が存在した。これは,高いラドン濃度の領域が断層破砕帯の存在を示していると推測される。