著者
長舩 哲齊 長谷 榮二 角田 修次
出版者
東京医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

Euglena細胞は前培養条件を適切に選べば、葉緑体形成の初期暗過程が観察できることを見いだし暗所で起こる現象と、光照射によって初めて誘導される現象とを区別して追究することを可能にした。本報告はこの実験系を用いて、葉緑体形成の初期にみられる光合成酵素RuBisCOおよび光化学系IIのLHCP IIの細胞内局在性を連続切片疫電顕法で経時的に追跡したものである。暗所で継代培養したEuglenaを有機栄養培地中で静置培養すると細胞質内にパラミロンと共に脂質の蓄積がみられる。このような細胞を暗所で無機培地に移しCO_2を通気する。144時間後の細胞に、照度3ftーcの弱光又は強光150ftーcを照射した。弱光条件下で形成されたチラコイド膜は方向性を欠いたカ-リ-型になる。一方、強光条件下では48時間後にピレノイドが葉緑体の中央部に移動し、正常な葉緑体構造が完成された。免疫電顕法により、RuBisCOの細胞局在性を追跡するとRuBisCOは細胞核およびCOS構造、次いでプロピレノイド及びストロ-マに見られた。次に、弱光3ftーcを照射すると、従来の実験系においては弱光条件下では合成されないとされてきたLHCP IIの合成、照度3ftーcでも起こることが免疫電顕法により初めて確かめられた。すなわちLHCP IIは弱光照射2時間後、核およびCOS構造、その後ゴルジ体、次にプラスチドに観察された。その結果、細胞質で合成されたLHCP IIがゴルジ体を経由し、葉緑体に運ばれることを最初に見いだした。