著者
中島 利博 山野 嘉久 八木下 尚子 樋口 逸郎 赤津 裕康 川原 幸一 上 昌広 丸山 征郎 岡田 秀親 荒谷 聡子
出版者
東京医科大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008 (Released:2008-04-01)

われわれがリウマチ滑膜細胞より発見した小胞体関連E3ユビキチンリガーゼ シノビオリンは遺伝子改変動物を用いた研究により、少なくともマウスにおいては関節症発症の必要十分因子であることが証明されていた。また、関節リウマチの新薬である抗TNFα製剤の感受性を決定するバイオマーカーの可能性も示されている。一方で、シノビオリンの完全欠損マウスは胎生期において致死であることも明らかとなっていた。したがって、これまで成獣における同分子の生理機能の解析、並びに関節症における分子病態を明らかとすることが不可能であった。そこで、本研究事業により、同分子のコンディショナルノックアウトマウスを作製し、これらの点を明らかにすることを目的とした。その結果、シノビオリンのコンディショナルノックアウトマウスは胎生致死でのみならず、出生後に同遺伝子をノックアウトした場合でも致死であることを発見した。さらに、その過程で線維化・慢性炎症に非常に密接に関与することが示されている(論文準備中)。現在、その恒常性維持にシノビオリンが必要と考えられる関節などの臓器特異的なコンディショナルノックアウトマウスの解析を行っている。上記のようにシノビオリンの機能制御は関節リウマチのみならず、線維化・慢性炎症を基盤とする疾患の創薬標的であることは明白であろう。われわれの有するシノビオリン抑制剤がマウスにおける関節炎モデルに有効であることを証明した(論文投稿中)。さらに、本テーマは橋渡し研究として米国のユビキチンに特化した創薬系ベンチャー プロジェンラ社との創薬開発プロジェクトへと進展した。
著者
荒谷 聡子 中島 利博
出版者
東京医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01 (Released:2014-04-04)

線維筋痛症 (FM) は全身性の強い慢性疼痛を主訴とする疾患である。発症原因は不明であり、根本的な治療法の確立されていない。我々は FM における小胞体ストレス分解、ミトコンドリア機能に注目してきた。本研究では神経特異的シノビオリン欠損マウス、FMの病態モデルマウスを作製また患者よりリンパ球を分離し、これらを用いて個体内での病因・病態解析を目的としている。臨床において FM 様の病態を引き起こすことが示唆されているワクチンを用いてモデルマウスの作製を試みたところ、尾の緊張および運動協調性低下を示すマウスが得られた。また FM 様の症状に視床下部の機能が関与していることが示唆された。
著者
福本 学 鈴木 正敏 木野 康志 山城 秀昭
出版者
東京医科大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01 (Released:2014-04-04)

福島県内および他の地域の野生ニホンザルからの臓器・筋肉・血液のサンプリングを継続して行い、2015年度内に87頭の採材を行った。生息地域周辺の除染に伴う体内放射性セシウム濃度の低下がみられる地域もあったが、未だに高い体内濃度を示す地域もあり、生息地域の環境汚染度合いの指標となることが期待された。これまでに採材した被災ウシの血漿生化学検査を行い、低線量被ばくのバイオマーカーとなりうる因子の探索を行った。その結果、血漿中LDHアイソザイム、ALT、MDA、SOD、GPxといったストレス関連因子が内部被ばく線量率と高い相関を示した。被災ウシから得られた精子について、体外受精により作出した受精卵移植、および凍結精子を用いて人工受精を行い、これまでこれまでに5頭の産仔を得た。産仔の外貌に異常は認められず、筋肉中の放射性物質の線量は検出限界以下であった。ゲルマニウム半導体検出器によるγ線スペクトロメトリにより、汚染稲わらの給与試験を行ったウシ19頭の臓器420試料、尿・大便200試料、ルーメン150試料、稲わら40試料の放射性セシウム濃度の計測を行った。これらの結果の詳細は現在解析中であるが、ウシ体外からのNaI(Tl)シンチレーション検出器によるγ線測定による結果と、ネックの骨格筋中の放射能濃度に相関を調べ、体外からの汚染検査の適用可能性を検討した。ウシの歯一本一本に含まれるSr-90、Cs-137の測定を行い、歯中のSr-90は歯の形成時期に取り込まれたものが主であること、Cs-137は形成時の取り込みに加えて、歯表面からの取り込みがあることが判明した。福島原発周辺生物への影響に関するシンポジウムを開催し、国内有数の研究者を集め、今までに明らかとなった事象の検証と問題点を討議した。その内容をまとめ、英文雑誌であるJournal of Radiation Research誌から福島特集号を上梓することによって世界に発信した。
著者
上田 しのぶ 黒田 雅彦 高梨 正勝 大野 慎一郎 土田 明彦
出版者
東京医科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011 (Released:2011-08-05)

microRNA(miRNA)はがんの発生や抑制に関与しており、血中ではエキソソームによって運ばれている。また、がん幹細胞は現在の治療法では残存し再発や転移を起こす可能性がある。我々はがん幹細胞に結合する分子をエキソソーム膜上に発現させ、がん幹細胞の増殖を抑制するmiRNAをエキソソーム中に取り込ませて血中に投与することで、がん幹細胞を標的とした治療法を確立できると考えた。乳がん細胞のEGFRに結合するペプチド(GE11)を発現させたエキソソームにlet-7aを内包させ (let-7a/GE11エキソソーム)、担がんマウスに尾静脈接種すると効率よくがん細胞へ到達し増殖抑制効果を示した。
著者
奥貫 陽子
出版者
東京医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010 (Released:2010-08-23)

Vogt-小柳-原田病において、末梢血リンパ球(PBMC)をコンカナバリンA刺激下で培養した際のIL-17産生量が多い患者は、発症時年齢が高く、視力回復に時間を要し、またステロイド薬総投与量が多いことが有意差を持って示された。このためPBMCのIL-17産生が多い患者の予後は低い患者と比較して予後が悪いことが推測され、PBMCのIL-17産生はVogt-小柳-原田病の治療効果を予測するマーカーとなる可能性が見いだされた。
著者
馬原 孝彦 秋元 治朗 羽生 春夫 清水 聰一郎 宮澤 啓介 橋本 孝朗 赫 寛雄 織田 順
出版者
東京医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01 (Released:2014-04-04)

神経細胞死と14-3-3蛋白の関連として、筋萎縮性側索硬化症の脊髄前角細胞での14-3-3白eta isoform発現をヒト剖検脳で確認した。そして、筋萎縮性側索硬化症の脊髄前角細胞死に重要と考えられているリン酸化TDP43とeta isoformの共局在も確認した。そしてリン酸化TDP-43が核より細胞質に移行し前角神経細胞死に関与する課程に14-3-3蛋白eta isoformが重要な働きをになう可能性を考察した。現在論文投稿中。また、筋萎縮性側索硬化症の脊髄前角細胞14-3-3蛋白とHMGB1との共局在を検討中。アルツハイマ-病、レビ-小体型認知症、パ-キンソン病例の血漿成分の凍結サンプルの収集が終了した。ELAISA法による血中HMGB1濃度測定を継続中。脳梗塞急性期の虚血コア周辺の神経細胞でのHMGB1の細胞質での局在を確認した。現在抗HMGB1中和抗体による脳梗塞治療の可能性がアニマルモデルの結果より指摘されている。われわれの結果は、虚血コア周辺の神経細胞の生存補助としての、この新規脳梗塞治療法のヒトでの研究に対して橋渡し研究として寄与できる。現在論文作成中。以前に脳梗塞と14-3-3蛋白の関連性はすでに論文として発表しているが、ヒト脳梗塞急性期のHMGB1と14-3-3蛋白の相互作用を念頭においた共局在について現在検討中。オートファジ-関連物質であるBeclin1の頸動脈硬化病変での発現を確認に、マクロファ-ジと形質転化した血管平滑筋細胞に局在していることを確認した。すでに、14-3-3蛋白とHMGB1蛋白の同部位での局在はは論文にしており、3物質の共局在を現在確認中。
著者
浅岡 章一
出版者
東京医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008 (Released:2008-04-01)

本研究では,覚醒時間延長中におけるエラー後の認知的処理機能に与える夜間の仮眠の影響について検討した.エラー後の認知的処理と関連する事象関連電位(ERN/NeおよびPe)の振幅を,深夜1:00~2:00まで仮眠をとった群と休憩のみをとった群において比較した.深夜に実施した認知課題における反応の正確性は,仮眠をとった群で高くなっていた.しかし, ERN/NeとPeの振幅に対しては仮眠の効果は認められなかった.
著者
持田 澄子
出版者
東京医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01 (Released:2013-05-21)

平成27年度には、アクテイブゾーンのタンパク質分子群のひとつであるCASTのリン酸化に注目し、リン酸化部位(serine 45)の遺伝子操作によるシナプス伝達機能変化を電気生理学的に検討して、シナプスタンパク質の機能的活性化を解析するとともに、C2コンフォーカル顕微鏡を用いてCASTリン酸化分子の局在と神経活動によるCASTリン酸化分子の増加を解析して、論文にまとめて12月にCell Reportsに投稿し、平成28年1月と平成28年5月6日にコメントを得て、再々投稿の準備中である。多くのタンパク質がシナプス小胞開口部位であるアクテイブゾーンを形づくっているが、その複合体の中心に位置すると考えられているCASTは、第45残基であるセリンが特異的にSADリン酸化酵素によってシナプス活動依存的にリン酸化を受け、シナプス小胞をアクテイブゾーンに移送する速度を遅くしてアクテイブゾーンで待機するシナプス小胞数を減少して、シナプス伝達を短期間抑制する短期シナプス可塑性という現象の一因となることが判明した。
著者
藤本 薫 高橋 真理 眞茅 みゆき 宮内 清子
出版者
東京医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01 (Released:2014-07-25)

本研究は、更年期女性の健康促進に向けて、女性自身が自己の健康を振り返り、健康行動の選択、実践をおこなうために、セルフコーチングを基本としたプログラムを作成し、評価を行うことを目的としている。平成25年度(1年目)は、まずインターネット上で更年期に関する情報がどのようなサイトから発信され、活用されているのかを検討した。これらの結果をふまえ平成26年・27年度はホームページによる63日間のプログラムを検討した。介入群には63日間、毎日メール配信され、登録者のみが閲覧できるホームページに入ることができる。ホームページ内では、更年期の健康に関する情報が更新される。またセルフコーチングをベースとした方法にて健康行動の促進をはかる。今後は人間ドックや地区婦人会などで研究参加のチラシを配布し、データ収集する予定である。
著者
伊藤 拓水
出版者
東京医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011 (Released:2011-08-05)

本研究で研究代表者は、催奇性を有する抗がん剤サリドマイドがいかなるメカニズムで標的タンパク質セレブロンの機能を阻害するのかを検証した。セレブロンはユビキチンリガーゼとして機能する。研究結果として、サリドマイドはセレブロンの酵素活性を下げるというよりも、認識する基質を変化させることが示唆された。薬剤結合後はサリドマイドがもはや元の基質を認識できなくなることが、結果として機能阻害として検出されていたと考えられる。
著者
田中 孝男
出版者
東京医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998 (Released:1998-04-01)

ベーチェット病患者血清中の抗網膜自己抗体の一つは抗網膜HSP60抗体である。患者は口腔内に再発するアフタや抜歯を契機に眼発作が起こるため、そこに常在する溶連菌が重要と考えられてきた。Sangius溶連菌HSPに対して特異的なγσT細胞も検出されている。エルシニア、溶連菌,網膜芽細胞腫および網膜のHSP60に対する免疫応答を検討したところ、抗網膜HSP60ならびに抗溶連菌HSP60に対してベーチェット病では著しい抗対価の上昇を示す。また,網膜HSP60をラットに接種すると平均12日目にぶどう膜炎が起り、組織学的に松果体炎を伴いにくい点でS抗原やIRBPによるEAUと相違した。ベーチェット病ではHLA-B51が疾患感受性であるとの報告はある。一方,その炎症はCD4陽性T細胞によるとされるが,それを誘導するHLA classII・自己抗原ペプチド複合体の様子は,今まで自己抗原が明確に同定されていなかった。ベーチェット病の自己抗原は網膜HSP60と考え疾患機序解明や治療法へのフィードバックを目的に本実験を計画した。平成11年度に明らかにした点は,網膜と溶血連鎖球菌S.PyogenesのHSP60がベーチェット病の発症に関わると考え,その性状を分子生物学的に解析した点である。すなわち,S.Pyogenesから抽出したDNAとウシ網膜cDNA libraryを鋳型にHSP60遺伝子領域をpolymerase chain reaction法で増幅し,増幅された断片をDNAシークエンサーにて塩基配列を決定し,アミノ酸の配列を推定した。解析結果をもとにペプチドを合成した。ペプチドを完全Freundのアジュバンドと混和し,ラットに接種して実験的ぶどう膜炎が発症するか否か検討した。その結果,ウシ網膜およびS.Pyogenes HSP60について,約200残基の内部配列を決定した。その結果,両者の配列は47%相同した。主として、ヒトHSP65の245-259番に相当する網膜HSP60と溶連菌HSP60のペプチドで実験的ぶどう膜炎の発症がみられた。網膜とS.PyogenesのHSP60のアミノ酸配列をもとに,ベーチェット病の発症機序を今後も検討することは,意義あると考えた。上記の結果を論文にまとめ,題:網膜及び溶連菌HSP60の分子生物学的検討,筆者,田中ら,日本眼科学会雑誌に投稿し,平成12年1月に同誌に受理された。
著者
藤森 実
出版者
東京医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009 (Released:2009-04-01)

抗癌剤の全身投与は重得な副作用を有しており、腫瘍選択的治療法の開発が急務である。われわれは固形癌の腫瘍内が正常組織に比べて嫌気的環境であることに着目し、乳酸菌の1種であるラクトバチルス・カゼイを用いて固形腫瘍への集積性と増殖抑制効果を検討した。その結果、偏性嫌気性菌であるKJ686菌は固形腫瘍に特異的に集積し正常組織では排除されていた。KJ686菌は腫瘍選択的デリバリーシステムとして有用であり高い治療効果が期待できる。
著者
長舩 哲齊 長船 哲斉 長谷 榮二 角田 修次
出版者
東京医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989 (Released:1989-04-01)

Euglena細胞は前培養条件を適切に選べば、葉緑体形成の初期暗過程が観察できることを見いだし暗所で起こる現象と、光照射によって初めて誘導される現象とを区別して追究することを可能にした。本報告はこの実験系を用いて、葉緑体形成の初期にみられる光合成酵素RuBisCOおよび光化学系IIのLHCP IIの細胞内局在性を連続切片疫電顕法で経時的に追跡したものである。暗所で継代培養したEuglenaを有機栄養培地中で静置培養すると細胞質内にパラミロンと共に脂質の蓄積がみられる。このような細胞を暗所で無機培地に移しCO_2を通気する。144時間後の細胞に、照度3ftーcの弱光又は強光150ftーcを照射した。弱光条件下で形成されたチラコイド膜は方向性を欠いたカ-リ-型になる。一方、強光条件下では48時間後にピレノイドが葉緑体の中央部に移動し、正常な葉緑体構造が完成された。免疫電顕法により、RuBisCOの細胞局在性を追跡するとRuBisCOは細胞核およびCOS構造、次いでプロピレノイド及びストロ-マに見られた。次に、弱光3ftーcを照射すると、従来の実験系においては弱光条件下では合成されないとされてきたLHCP IIの合成、照度3ftーcでも起こることが免疫電顕法により初めて確かめられた。すなわちLHCP IIは弱光照射2時間後、核およびCOS構造、その後ゴルジ体、次にプラスチドに観察された。その結果、細胞質で合成されたLHCP IIがゴルジ体を経由し、葉緑体に運ばれることを最初に見いだした。