著者
坂本 公一 高橋 忠雄 吉田 欣也 車田 頼義 角田 元成
出版者
日本家畜臨床学会
雑誌
東北家畜臨床研究会誌 (ISSN:09167579)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.36-40, 1991-08-20 (Released:2009-04-22)
参考文献数
8

臨床症状から第四胃食滞と診断された10例の子牛について、臨床的観察を行うとともに、診断および治療について観察した。その結果、発症子牛は何れも黒毛和種の哺乳子牛で、発症日令は18~158日、平均48日であった。初診時の症状は、何れも水様便であったが、下痢症に対する治療法に反応せず次第に衰弱し、哺乳欲の低下、腹囲の膨大、第四胃部の拍水音および排便量の著しい減少が認められた。No.1からNo.3の3頭には、第6病日以後も内科的対症療法を継続したが、平均19日の経過でいずれも死亡した。No.4、No.5の2頭には第6病日以後、第四胃切開術を実施し、No.6からNo.10の5頭には第四胃内容の攪拌を目的とした腹部のマッサージを実施した結果、いずれも処置の翌日、多量の便または正常便の排出と供に一般症状の改善がみられ治癒した。死亡したNo.1とNo.2の幽門部には潰瘍がみられ、その隆起によって幽門部が狭窄しており、No.3の幽門は毛球によって閉塞していた。また手術を実施したNo.4とNo.5の第四胃内には未消化の植物線維が堆積していた。以上のことから子牛の臨床症状として、腹囲膨病、第四胃拍水音および排便量の著しい減少などがみられた場合は、第四胃マッサージあるいは、第四胃切開術は第胃食滞の治療に効果のあることが認められた。
著者
樋口 貞行 角田 元成
出版者
日本家畜臨床学会 ・ 大動物臨床研究会
雑誌
日本家畜臨床学会誌 (ISSN:13468464)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.51-55, 2007-10-30 (Released:2009-04-22)
参考文献数
5
被引用文献数
2 1

重篤な下痢症に罹患した子牛の救命率を向上させるには下痢症に伴って生ずる電解質・酸塩基平衡異常の改善が重要であるが、黒毛和種子牛に関するこれらの情報は極めて少ない。今回、携帯型の血液ガス分析装置を供試して、生後30日以下の黒毛和種子牛および下痢に罹患している子牛の静脈血の血液ガスおよび血液生化学成分の諸成分を測定した。その結果、健康な子牛では、pHv7.35±0.09、炭酸ガス分圧(PvCO2)60.5±12.5mmHg、総炭酸ガス濃度(tCO2)33.5±3.5mEq/l、重炭酸(vHCO3-)32.5±3.5mEq/l、Na+136.5±2.5mEq/l、K+4.75±0.65mEq/l、Cl-99.5±3.5mEq/l、過剰塩基(Base Excess;BE)7±4mEq/l、アニオンギャップ(Anion Gap;AG)9.35±2.65mEq/l、BUN9±6mg/dl、血糖114.5±29.5mg/dl、ヘマトクリット(Ht)27.55±10.25%、ヘモグロビン(Hb)9.15±3.35g/dlであった。健康な子牛における血液ガスおよびその関連血液成分の測定値は、下痢症に伴う代謝性アシドーシスに陥った子牛の多くの血液成分値との間に明確な相違を示した。子牛の救急診療あるいは日常診療における静脈血液の血液ガス分析は、臨床的な意義が大きく、また本研究における健康な子牛の血.液ガス諸相の測定値は、黒毛和種子牛における静脈血液の基準値になり得るものと考える。