著者
岡田 翔一 田川 知嘉 鈴木 直人 樋口 貞行 片貝 富夫 山野辺 浩
出版者
日本家畜臨床学会
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.7-11, 2018 (Released:2018-10-02)

酵母細胞壁混合飼料は成牛および育成牛において抗ストレス作用が期待されており,寒冷地における子牛の発育増進に寄与する可能性がある。本研究では,寒冷期の子牛25頭を,酵母細胞壁混合飼料を給与する試験群13頭と給与しない対照群12頭とに分け,試験期間中のTemperature-Humidity Index(THI)を算出するとともに,体重測定および血液生化学性状検査を行った。THIは子牛が寒冷ストレスを受ける可能性が高い数値である50を下回る期間が長く,平均値は49.8であった。試験群と対照群の間で,試験期間内での増体に有意な差はなかったが,酵母細胞壁混合飼料給与から30日目に,対照群と比べ試験群の血清中ビタミンA濃度の有意に高い値を示した。酵母細胞壁混合飼料は寒冷ストレスによる影響を低減させることで,子牛の成長に伴う血清中ビタミンA濃度の上昇を維持することが示唆された。
著者
樋口 貞行 角田 元成
出版者
日本家畜臨床学会 ・ 大動物臨床研究会
雑誌
日本家畜臨床学会誌 (ISSN:13468464)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.51-55, 2007-10-30 (Released:2009-04-22)
参考文献数
5
被引用文献数
2 1

重篤な下痢症に罹患した子牛の救命率を向上させるには下痢症に伴って生ずる電解質・酸塩基平衡異常の改善が重要であるが、黒毛和種子牛に関するこれらの情報は極めて少ない。今回、携帯型の血液ガス分析装置を供試して、生後30日以下の黒毛和種子牛および下痢に罹患している子牛の静脈血の血液ガスおよび血液生化学成分の諸成分を測定した。その結果、健康な子牛では、pHv7.35±0.09、炭酸ガス分圧(PvCO2)60.5±12.5mmHg、総炭酸ガス濃度(tCO2)33.5±3.5mEq/l、重炭酸(vHCO3-)32.5±3.5mEq/l、Na+136.5±2.5mEq/l、K+4.75±0.65mEq/l、Cl-99.5±3.5mEq/l、過剰塩基(Base Excess;BE)7±4mEq/l、アニオンギャップ(Anion Gap;AG)9.35±2.65mEq/l、BUN9±6mg/dl、血糖114.5±29.5mg/dl、ヘマトクリット(Ht)27.55±10.25%、ヘモグロビン(Hb)9.15±3.35g/dlであった。健康な子牛における血液ガスおよびその関連血液成分の測定値は、下痢症に伴う代謝性アシドーシスに陥った子牛の多くの血液成分値との間に明確な相違を示した。子牛の救急診療あるいは日常診療における静脈血液の血液ガス分析は、臨床的な意義が大きく、また本研究における健康な子牛の血.液ガス諸相の測定値は、黒毛和種子牛における静脈血液の基準値になり得るものと考える。