- 著者
-
角田 季美枝
- 出版者
- 千葉大学公共学会
- 雑誌
- 公共研究 (ISSN:18814859)
- 巻号頁・発行日
- vol.10, no.1, pp.236-252, 2014-03
地形を歩いて楽しむ人が増えている。 たとえば、2004年に設立された東京スリバチ学会のフィールドワークは、雨天決行だが、天気が良い場合、参加者は最近では1回70名ほどの大盛況だという。 地形の楽しみ方はいろいろある。ただ歩いて街の風景を楽しむ、谷や低地の配置の規則を発見して楽しむ、街の歴史を楽しむ(とくに古地図と現在の地図を比較しながら歩くとき)などなどだ。評者の専門である環境政策との関係では、地形と地球環境問題がつながると非常に楽しい。なぜこの地名が残っているのか、なぜそこにこの神社があるのかなどを、その土地の地形の由来から実感をともなって理解できると、「やっぱり地べたは正直だなあ」と感じ、本当に楽しいのである。 環境問題と地形をつなげる第一人者に岸由二氏がいる(以下、尊称略とさせていただく)。専門は進化生態学であり、現在、慶應義塾大学名誉教授で、特定非営利活動法人鶴見川流域ネットワーキング代表理事などを務めている。気候変動、生物多様性などの地球問題解決と地形(岸の表現でいえば「大地のでこぼこ」ないしは「大地の凸凹」)をつなげることの重要性を長年、「流域思考」というアイデアで提案している。千葉大学21COE「持続可能な福祉社会に向けた公共研究拠点」の期間にたびたびシンポジウムで登壇いただいたほか、本誌にも原稿を投稿いただき、持論を共有いただいた。 今回紹介する岸の新著『「流域地図」の作り方』は、主に中高生に向けて、身近な場所の「流域地図」をつくって大地のでこぼこを歩こう、歩いて地球環境問題解決のアイデアを考える人になってほしいと、大きな期待をかけてい