著者
譚 天
出版者
千葉大学公共学会
雑誌
公共研究 = Journal on public affairs (ISSN:18814859)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.237-286, 2020-03

The Mainstreaming of the Populist Radical Right Parties (PRRPs) refers to one of the critical phenomena in the current West European party politics. Since PRRPs usually attempt to increase their electoral fortunes by pledging "Political Innovation", this study primarily aimed to delve into the actual impact of PRRPs on the "Quality of Government" (QoG) as coalition partners of local and/or national government in eleven West European countries. First, the definition of the QoG is clarified. Impartiality on the "output" side of the political process, i.e., in the exercise of public authority, should be considered the super ordinate concept of QoG. Second, PRRPsʼ impact on the "input" side of political process, consisting of policy making and decision, is analyzed. In contrast to traditional views, PRRPs as coalition partners are capable of making highly popular and successful social policies in favor of the poor and needy. Third, due to the rare existing studies on this topic, I outline populist governmentsʼ impact on the QoG worldwide. It accordingly seems that populist governments are inclined to adversely affect the QoG. Fourth, the hypothesis is proposed that PRRPs governments, similar to populist governments, will also adversely affect the QoG. To test the hypothesis, methods of "correlation analysis", "multiple regression analysis", and "principal component analysis" are employed. The findings of qualitative and quantitative analyses suggest that PRRPs have more negative rather than positive impact on the QoG, in particular the "State Robustness", "Checks and Balances", "Government Effectiveness", as well as "Degree of Corruption" aspects. As a result, though PRRPs assert themselves as alternatives of "corrupt", "inefficient", and "unrepresentative" traditional parties, it has been rarely evidenced that PRRPs as coalition partners will "reform" the establishment and subsequently facilitate the QoG.
著者
倉阪 秀史 佐藤 峻 宮﨑 文彦
出版者
千葉大学公共学会
雑誌
公共研究 = Journal on public affairs (ISSN:18814859)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.341-362, 2015-03

2014年11月に、独立行政法人科学技術振興機構(JST)社会技術研究開発センター(RISTEX)の平成26 年度新規研究開発領域である「持続可能な多世代共創社会のデザイン」に採択され、「多世代参加型ストックマネジメント手法の普及を通じた地方自治体での持続可能性の確保」(研究代表者:倉阪)という新しい研究プロジェクトを開始できることとなった。 人口減少・超高齢化社会において社会を持続可能とするには、社会を支える資本ストック(人的資本、人工資本、自然資本、社会関係資本)の健全な維持と、世代間継承が必要である。そのためには、資本ストックの将来推移を予測して、それらの適切な維持・管理・活用(ストックマネジメント)について検討し、包括的に地域をデザインすることが求められる。資本ストックは地域によって異なるため、各地方自治体がストックマネジメントを行わなければならないが、その経験が蓄積されていない。そこで本プロジェクトでは、自治体職員向けに、資本ストックの現況の自治体間比較データベースや将来予測ソフトウェアを開発する。また、将来予測に基づいた対応シナリオの作成や多世代参加型の合意形成など、ストックマネジメントの方法論をマニュアル化し、これを普及させることにより地域レベルでの持続可能性の確保を目指す。 なお、この研究プロジェクトは、正式名称が長いため、愛称として342地域ストックマネジメントに関する研究プロジェクトOPoSSuM の概要OPoSSuM(オポッサム;Open Project on Stock Sustainability Management)を用いることとしている。研究成果は、人文社会科学研究科ウェブサイトに掲載してい
著者
角田 季美枝
出版者
千葉大学公共学会
雑誌
公共研究 (ISSN:18814859)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.236-252, 2014-03

地形を歩いて楽しむ人が増えている。 たとえば、2004年に設立された東京スリバチ学会のフィールドワークは、雨天決行だが、天気が良い場合、参加者は最近では1回70名ほどの大盛況だという。 地形の楽しみ方はいろいろある。ただ歩いて街の風景を楽しむ、谷や低地の配置の規則を発見して楽しむ、街の歴史を楽しむ(とくに古地図と現在の地図を比較しながら歩くとき)などなどだ。評者の専門である環境政策との関係では、地形と地球環境問題がつながると非常に楽しい。なぜこの地名が残っているのか、なぜそこにこの神社があるのかなどを、その土地の地形の由来から実感をともなって理解できると、「やっぱり地べたは正直だなあ」と感じ、本当に楽しいのである。 環境問題と地形をつなげる第一人者に岸由二氏がいる(以下、尊称略とさせていただく)。専門は進化生態学であり、現在、慶應義塾大学名誉教授で、特定非営利活動法人鶴見川流域ネットワーキング代表理事などを務めている。気候変動、生物多様性などの地球問題解決と地形(岸の表現でいえば「大地のでこぼこ」ないしは「大地の凸凹」)をつなげることの重要性を長年、「流域思考」というアイデアで提案している。千葉大学21COE「持続可能な福祉社会に向けた公共研究拠点」の期間にたびたびシンポジウムで登壇いただいたほか、本誌にも原稿を投稿いただき、持論を共有いただいた。 今回紹介する岸の新著『「流域地図」の作り方』は、主に中高生に向けて、身近な場所の「流域地図」をつくって大地のでこぼこを歩こう、歩いて地球環境問題解決のアイデアを考える人になってほしいと、大きな期待をかけてい
著者
倉阪 秀史 佐藤 峻 鷺谷 駿
出版者
千葉大学公共学会
雑誌
公共研究 = Journal on public affairs (ISSN:18814859)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.286-297, 2018-03

[はじめに] 石炭火力発電を新設する計画が全国各地で行われている。その背景には、石炭の価格が安価で経済性が見込めることがあげられるが、地域経済に経済効果は実は短期間にとどまる。本稿では、過去の石炭火力発電建設が立地自治体の財政力指数に及ぼした効果を振り返って、このことを実証するとともに、千葉市で計画されている規模の石炭火力発電をモデルとして、地域経済に及ぼす効果と税収に及ぼす効果を概算してみたものである。
著者
吉永 明弘
出版者
千葉大学公共学会
雑誌
公共研究 = Journal on public affairs (ISSN:18814859)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.161-200, 2015-03

環境倫理学がアメリカで誕生してから30 年以上が経過している。当初は「人間中心主義」は克服しうるか、自然物に「内在的価値」を認めうるか、といった総論的な議論が中心だったが、1990 年代から、個別具体的な環境問題に応答しうる議論を行うべきだという主張(環境プラグマティズム)がなされ、他の環境研究者との学際的連携や政策提言が志向されるようになった。日本では、加藤尚武が、①権利概念の自然物への拡張、②将来世代への責任を組み込んだ意思決定システムの構築、③地球の有限性の自覚に基づく新しい政治経済体制の正当化といった論点を提出し、鬼頭秀一が、それぞれの地域に特有の自然観や文化(ローカルノレッジ)に立脚した「ローカルな環境倫理」の構築の必要性を提唱した。 このような中で、筆者は、これらの環境倫理学の議論が「ご託宣」や「お説教」にならずに、各人が自分自身のこととして受けとめる(自覚化する)ためには、どのような論じ方が必要か、ということをテーマの一つとして考えてきた。そのテーマは、環境プラグマティズムの主唱者のライト(Andrew Light)のいう、環境保全の「動機づけ」の問題(Light 2002)とも重なっているが、それを考えるには、すでに環境保全を行っている人の実際の動機を探ることが参考になるだろう。サイエンスライターのタカーチ(David Takacs)による保全生物学者へのインタビューの中には、彼らが保全生物学を専攻したきっかけについて語っている箇所がある。その中に、子どもの頃の遊び場でもあった身近な自然が不当に破壊されたことへの憤りによって環境保全に動機づけられたという趣
著者
倉阪 秀史
出版者
千葉大学公共学会
雑誌
公共研究 (ISSN:18814859)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.309-360, 2014-03

2004年から毎年1本の法案を作成する自主講座「法案作成講座」を開催しているが、2013年は「エネルギー協同組合法案」を作成した。農業協同組合法をベースとしつつ、組合員間でのエネルギー供給に関する規制緩和、市町村による分散的エネルギー事業への支援措置、政策金融公庫資金を活用した低利融資などを盛り込んだものである。講座は、11月2日、12月6日、12月13日、12月20日の4日間にわたって、18:30-21:00という時間に東京・田町のキャンパスイノベーションセンターで行われた。参加者は一部参加を含め12名であった。
著者
加藤 壮一郎
出版者
千葉大学公共学会
雑誌
公共研究 = Journal on public affairs (ISSN:18814859)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.91-148, 2016-03

本研究は、2015 年度スカンジナビア・ニッポンササカワ財団助成事業による研究成果である。また、2015 年度北ヨーロッパ学会第14 回研究大会(愛知東邦大学)経済専門分科会における「デンマーク・積極的労働市場政策における地域雇用評議会の役割と展開」においても発表の機会をいただいた。本論文は、発表内容を修正し、再構成したものである。
著者
柴田 真希都
出版者
千葉大学公共学会
雑誌
公共研究 (ISSN:18814859)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.130-179, 2014-03

近代日本における共和主義といえば、中江兆民の「レスピユブリカー」(respublica)論が良く知られている。中江における「君民共治」型の共和主義思想については、彼のルソー理解の特徴とともに、明治10、20年代にわたる自由民権運動との関わりの中で、同時代の植木枝盛などの事例と比較されながら、着実に研究されてきたといってよい。 それでは内村鑑三と共和主義との関連についてはどうだろうか。内村と共和主義との結びつきなど聞いたことはない、という人は思想史研究者の中でも少なくないかもしれない。日本の共和主義に関する代表的論考といえる家永三郎の論文にも、内村のそれについては言及されていない。実際、内村における共和主義--ここではひとまず英語のrepublicanismの適用範囲を想定されたい--の輪郭や内実についてのまとまった論稿というのは未だ確認されていない。本研究発表の目的の一つは、この内村における共和主義をめぐる諸表象を整理し、その思想史的な意味を問うための素地を準備することにある。
著者
柴田 真希都
出版者
千葉大学公共学会
雑誌
公共研究 (ISSN:18814859)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.130-179, 2014-03

近代日本における共和主義といえば、中江兆民の「レスピユブリカー」(respublica)論が良く知られている。中江における「君民共治」型の共和主義思想については、彼のルソー理解の特徴とともに、明治10、20年代にわたる自由民権運動との関わりの中で、同時代の植木枝盛などの事例と比較されながら、着実に研究されてきたといってよい。 それでは内村鑑三と共和主義との関連についてはどうだろうか。内村と共和主義との結びつきなど聞いたことはない、という人は思想史研究者の中でも少なくないかもしれない。日本の共和主義に関する代表的論考といえる家永三郎の論文にも、内村のそれについては言及されていない。実際、内村における共和主義--ここではひとまず英語のrepublicanismの適用範囲を想定されたい--の輪郭や内実についてのまとまった論稿というのは未だ確認されていない。本研究発表の目的の一つは、この内村における共和主義をめぐる諸表象を整理し、その思想史的な意味を問うための素地を準備することにある。