著者
角谷 徳芳
出版者
The Showa University Society
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.481-492, 1981
被引用文献数
1

近年口蓋裂手術は, 言語改善並びに顎発育への影響を考慮する傾向にある.現在われわれの国において主流をしめる手術法はDorrance, Wardill等の開発したpush-back法であるが, これは口蓋への手術侵襲が骨膜下層である為, 顎発育への影響が大きいとする意見があり, Perkoが開発した骨膜上層での手術法を推奨する者が現われてきた.そこでわれわれは, 実験的に正常幼若ラットを使用し, 片側口蓋粘膜を骨膜下に切除したもの50匹, 骨膜上で切除したもの50匹, 侵襲を加えないで成長させたもの50匹を1カ月ごと5カ月間各々10匹づつ断頭し, 乾燥骨としたものの, 口蓋縫合線の変化及び臼歯間横径を測定した.その結果は下記の通りである.以上口蓋裂手術時において現在主流をしめる手術法において骨膜下層での侵襲と骨膜上層での手術侵襲の二通りの方法が存在するが, 単に外科的侵襲のみについてその発育影響を比較するという意味で, ラット口蓋への実験を進めた結果, 骨膜下層までの侵襲は縫合線への影響は大きいが, 口蓋全体の発育に影響を及ぼすほどの侵襲ではないという結果を得た.