著者
諸谷 万衣子
出版者
The Society of Japanese Manual Physical Therapy
雑誌
徒手理学療法 (ISSN:13469223)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.29-35, 2022 (Released:2022-10-29)
参考文献数
34

運動系は理学療法士のアイデンティティーを構成する大きな一領域である。運動機能障害を説明するモデルとして,病理運動学的モデルと運動病理学的モデルの2種類を提案されることがある。Movement System Impairment diagnostic system(運動系機能障害診断システム:MSI診断システム)は運動病理学的モデルを基盤としており,Sahrmannによって提唱されたものである。MSIでは,日常活動の反復運動や持続的アライメント(ライフスタイル)が運動機能障害をもたらし,いずれは筋骨格系の問題を引き起こすと考えている。本稿ではMSIの主要コンセプトである,過剰可動性の部位が痛みの局所である場合が多いこと,相対的柔軟性と相対的硬さの影響,診断がもたらす結果,系統的な検査の大切さ,活動に特異的な再練習の必要性などを説明する。また,MSIを学ぶ過程で度々みられる誤解についても紹介する。